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検察改革の正体は
特捜部弱体化と赤レンガ派の勝利

赤レンガ派の筆頭、小津検事総長 Photo:Kyodo

 今月12日、東京地検特捜部長に中原亮一氏が就任した。だが、会見場にマスコミのカメラを入れることが許されない、異例の新任挨拶となった。「特捜部を特別扱いしない」という渡辺恵一・東京地検検事正の強い意向が働いたとされる。これも「検察改革」の表れなのだろうが、特捜部弱体化を象徴する出来事だった。

 法務・検察は、法務省エリートの「赤レンガ派」、事件捜査叩き上げの「現場派」、関西検察を握る「関西派」に分かれる。だが関西派は、大阪地検の証拠改竄事件がとどめとなり、解体が決まった。一方、東京の現場派も、小沢一郎氏を強制起訴に追い込んだ陸山会事件で捜査報告書の虚偽記載が明らかになり、致命的なダメージを負っている。

「現在の特捜部は、よほど筋のいい端緒がない限り、大型事件には乗り出せないはずです。今後は国税庁や公正取引委員会などの告発案件を無難に処理するだけでしょう」と、ある検察幹部は認める。

 独自捜査にこだわり、無理筋の政界捜査をしたツケは、検察のトラウマになっている。

「佐久間達哉・元特捜部長らの強引な捜査手法には、今なお検察内部に批判が渦巻いています」(別の検察幹部)。取り調べを録画する「可視化」まで法相から指示され、特捜検察の手足は縛られた。大型疑獄事件で、特捜検事が共犯者に自白を迫るような捜査は、もはや不可能に近い。

 新検事総長には小津博司氏、ナンバー2の東京高検検事長に大野恒太郎氏が就任する。2人の共通項は、東大法卒で、法務省刑事局長と事務次官のポストを経験していることだ。つまりガチガチの「赤レンガ派」の勝利である。これで次期検事総長は大野氏に決まったといえる。

 一方、新特捜部長の中原氏は慶応大卒で現場派一筋。

「愛妻は大学時代の同級生。彼は高校時代、天文部に所属し、また大のカメラ好きです。休日には今も自然風景を撮影に行くようです」(知人)。中原氏もしばらくは自然体でいくしかないだろう。

 赤レンガ派は特捜検察の看板に、もはや何の期待もしていない。検察批判の嵐をやり過ごし、大野氏に無難にバトンを渡したいだけなのだ。

 特捜部は「正義の最後の拠り所」と言われる。それが甦るのは、いつになるだろうか。

「週刊文春」編集部

※この記事の公開期間は、2015年07月18日までです。

この記事の掲載号

2012年7月26日号
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