教授のいうことを聞きなさい! (でぶ男)
1話 日常から日常へ
大晦日の晩、除夜の鐘の音をききながら、意識が無くなっていく。
「誰かー! 誰かー!」
既に身体の自由がないから大声で叫ぶが、誰も助けには来ない。
独身で、家の周りには住宅は無いのだから当たり前のことではあったが、これ程までに独身である事を悔やんだことはない。
そんなことを考えている間にも徐々に意識が薄れて、目の前が真っ暗に変わっていく。
いったいどれくらいの時間が経ったのか、真っ暗だった目の前が明るくなった。
そんな俺の目の前には、先程まで居た自室とは違い、何も無い殺風景な空間が広がっている。
「ようやく目を覚ましたようじゃな」
「ここはどこでしょうか?」
何も無い空間で老人が姿おあらわした。
その姿は俺が見ても、只者ではない事はひと目で分かり、自然と敬語を使って話していた。
その様子に老人は申し訳なさそうな顔で俺に告げる。
「お主は死んだ」
「え?」
いきなり言われた事に思考がついていかない。
「正確には一酸化炭素中毒で死んだ」
「なるほど」
老人の説明で、納得がいった。
多分、久々に倉庫から出してきた石油ストーブが行けなかったのだろう、窓も閉めっぱなしにしていたから、一酸化炭素中毒で死んでしまったんだな。
「お主が考えている事で大体は正しい しかし、お主は後75年は生きる運命だった」
「運命?」
「そうだ、運命だ ワシは日本人の寿命を管理する神でな、部下の手違いでお主の運命が書き換わってしまったんだ」
「生き返ることはできないのでしょうか? やりたい事がまだあったのですが」
俺のやりたい事とは、恋だ。
ゲームや漫画で擬似恋愛はやった事があるが、所詮は紛い物の恋愛で、ゲームの主人公の様にハーレムどころかまともな恋愛を現実でした事がない。
「もとの世界へは生き返ることは、まず無理だな。 しかし、別の世界ならば生き返ることもできるし、恋愛もやろうと思えばできるだろう」
「ほ、本当ですか!」
嬉しすぎて思わず老人の手を握ってしまった。
、、、顔に似合わず肌は、若々しいな。
そんな事を考えていると、老人は再び喋りだす。
「お主が転生するのは【パパのいうことを聞きなさい】の世界だ」
タイトルが長い!?
それに転生先の舞台は陵辱系のエロゲの世界か。
俺の考えを知ってか知らずか、老人は俺の疑問に答えてくれる。
「ちなみに【パパ聞き】の世界はラノベの世界だ。 間違ってもエロゲの世界ではないぞ」
「それはよかった」
「まあ、手違いで殺してしまったのは私だからな、欲しい特典を何でも3つやろう」
「ありがとうございます」
「ちなみに戦闘はないから、魔法とか武器とかのファンタジー系のチートはいらないと思うぞ」
老人の言葉を聞き一瞬で特典内容が決まる。
「では、困らない程度のお金、飛び抜けた頭脳と身体能力をください」
「わかった。 その特典ならば、与える事が出来るだろう ついでに原作の知識もあげよう、必要になるかはわからんが」
老人はそう言った後、ポケットから出した端末を使って、何かを打ち込み俺に近づいて、俺の頭を触る。
その瞬間に老人の手が光り、膨大な量の知識が付与された。
「これで完了だ。 後は新しい世界で、悔いの残らないように過ごしなさい ではの」
俺が何かを言う前に周りは光だし、この空間に来る前のように、目の間が真っ暗になった。