稀勢の里との激闘で目の上を負傷した白鵬=両国国技館で(沢田将人撮影)
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◇秋場所<14日目>
横綱白鵬(28)=宮城野=が、ただ一人3敗で追っていた大関稀勢の里(27)=鳴戸=をはたき込んで13勝目を挙げ、千秋楽を待たずに4場所連続27度目の優勝を決めた。4連覇は2010年春場所から7連覇して以来2度目。4場所連続優勝を複数回マークしたのは大鵬、朝青龍(3度)双葉山、千代の富士(2度)に続き5人目。27度目の優勝は32度の大鵬、31度の千代の富士に次いで歴代3位。新入幕の遠藤(22)=追手風=は左足首のけがで休場した。
静と動。白鵬は闘争心を抑えきれない稀勢の里に対し、まるで気配を消したかのように静かにたたずんでいた。取組前に、勝負は決していたのではないだろうか。
名古屋場所は仕切りで合わせない稀勢の里にいら立ち、敗れた。今場所も同じように立ち合いでじらされたが「まあ、経験じゃないの」と取組後に笑い飛ばしたように意に介さず。大関が得意の左四つに組み、すくい投げで崩してからはたき込んだ。
まげをつかんだのではないかと物言いがついたが、軍配通り。2度目の4連覇で27回目の優勝。パックリと割れた左眉から鮮血を滴らせながら、拝むように分厚い懸賞金を受け取った。相撲診療所で処置した傷は長さ1・5センチ、深さ3ミリ。「男前が台無しだね。勝利の勲章」。そう言って笑わせる姿には余裕があふれていた。
場所前にはこう言っていた。「『たまたま』ってないんです。『たまたま勝った』と言う人がいますが、何かある」と。親交のある写真家のアラーキーこと荒木経惟に「運は最初から決まっている。そういう星に生まれている」と、また歌手の松山千春には「運は軍が走ると書く。戦わない人に運は来ない」と言われたそうだ。
「稀勢の里はこのごろ力がついてきているのは事実。力をつけた力士と優勝争いを数場所やっているのも、やりがいがある。きょうは実力者の稀勢の里に勝って優勝。満足してます。勝ち続けるのは大変です。2回目の4連覇。達成感があります」。白鵬には「たまたま」ではない、必然の勝利だったのだろう。
千秋楽を待たずしての優勝はこれで通算14回目。千代の富士の15回に次ぎ、朝青龍と並ぶ2位タイ。九州場所でも記録が待っている。過去4回記録している年間70勝まであと2勝に迫り、5回目となれば大鵬と並び史上2位タイ。自己記録更新となる7年連続の年間最多勝もほぼ手中に収めている。千秋楽をきっちり締め、6連覇中の九州場所に向かいたい。 (岸本隆)
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