■銀行の「保身」的行為を告発
岡山の同族企業ながら、高い研究開発力を誇った世界的バイオ企業、林原(はやしばら)が会社更生法の適用申請をしたのは一昨年2月。「財産もあり、赤字もなく、利息もきちんと払い続け、債務も確実に減少し続けていた会社」がなぜつぶれたのか。研究畑の兄の社長を専務として支えた著者が雪辱を期し、報道とは異なる「真実」を綴(つづ)った実録だ。主眼は破綻(はたん)の誘因となったメーンとサブ、銀行2行の一連の「保身」的行為の告発にある。
非上場で銀行借入に依存したが、経営者と株主が一体で企業統治が内向きになり、借入金を過小報告しても、資産超過なのだからと軽視するなど、問題があったことは自身も認める。それでも追及するのは「粉飾」に反応した2行の変身ぶりだ。
銀行団として再建策を進める前に「抜けがけ」的に利益確保に執着。結果、再建策は流れ、会社更生法適用に至る。経営陣は「知らぬ間にベルトコンベアにのせられ、奈落の底に連れていかれ」、仕事も全財産も失う。林原の弁済率は93%と驚異的な数字を記録。「潰す必要があったのか」との声があがった。
高視聴率テレビドラマの主人公のようなバンカーが実在したら流れは変わったか。これが日本の現実か。「粉飾」を知った銀行支店長の「自分も確実に左遷される」のひと言が目に焼き付く。
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