完成した映画を観た感想を聞かせてください。
松本:本当にいい作品に参加させてもらったなと思います。面白かったです。自分が出ている作品だといろいろなことが気になって、面白いとは思っても、たくさんの人に観てもらえるかなぁ…とか考えることもあるんですが。でも、今回は自分が出ているけれど、純粋な気持ちで楽しめたし、観終わったあとにあたたかい気持ちになる、そんな作品でした。
上野:いつも初号試写を観るとき、自分の演技は大丈夫だったかな、どうだったかな、っていろいろと考えてしまって、気持ち的には楽しめないんです。でも、『陽だまりの彼女』は純粋に楽しめました。冒頭の浩介の幼い頃の映像から作品のなかに入り込めたんです。撮影現場も充実していて、リラックスして楽しめていました。音楽もよかったですね。すべてがよかった。しあわせな気持ちになって映画館を出られる映画だと思います。
松本さん、面白いと思ったというその“面白さ”をもう少し詳しく言うと?
松本:2人の恋愛から感じる愛情のあたたかさとか、想いの一途さとか、そういうところから伝わってくる幸福感ですね。誰かと一緒に時間を過ごすって、こんなにもあたたかくて、こんなにも強い気持ちになれるんだなって、それをすごく感じる映画でした。
女性男性問わず号泣する映画になっていますが、松本さんがグッときたシーンは?
松本:ネタバレになるかもしれないけれど、いいなと思ったセリフが─「けど今はね…まだ痛いのが嬉しいの」というセリフ。あれは強烈でしたね。そのときの真緒の表情がすごく印象的で、いいお芝居だなと。
上野さんが演じた“真緒”というキャラクターについて聞かせてください。
上野:『陽だまりの彼女』というタイトルにもあるように、ポジティブであたたかい女性ですよね。思い立ったら行動に移す行動力もあって。10年経っても浩介への想いが変わらないというのも真緒らしさだと思います。そんな真緒の感情はファンタジーだからこそうまく表現できたのかもしれないです。一見シンプルな役のように見えるかもしれないですが、こだわりもあって、とてもやり甲斐のある役でした。“陽だまりの彼女”というのは浩介が真緒を見て感じていることなので、真緒にとっては浩介が自分を照らしてくれる太陽のような存在。そういう関係性を演じることができたのは、松本さんとの信頼関係があったからこそ。台本を読んだとき、松本さんの演じる浩介は真緒のピュアな想いをぜんぶ受け止めてくれるあたたかさがあると感じたんですよね。真緒がすてきなのは浩介がすてきだからで、浩介がすてきなのは真緒が浩介を想っているから、そう思うんです。
真緒は明るくて仕事もできて浩介を引っ張っていく積極的なところがありながら、誰にも言えない秘密を内に秘めているというキャラクターでした。どんな風に役作りをされましたか?
上野:真緒らしさとしては、三木監督が求めていることを現場で確認しながら作っていった感じなので、こうやろうというよりは、これが真緒なんだろうな……という空気感を作るようにしていました。いつも真っ直ぐに浩介を見つめているとか。自分の中で楽しみながら演じれたらいいなと思っていました。キャリアウーマンという感じではなくて、ただやりたいことにまっすぐなんですよね。ハードワーカーではないけど、レスポンスが早そうですよね。そういう人だから自分の中に溜め込まないし、自由きままな感じも真緒らしいですよね。でも、たったひとつ譲れないのが浩介の存在。真緒は浩介のためならひたすらひたむきになれるんです。それは真緒がある秘密を持っているからなんですけど、自由きままに浩介を振りまわしているのではなく、その秘密があるからこそどこかがむしゃらなんですよね。
松本さんが演じた浩介は、松本さんがこれまで演じてきた濃いキャラクターとは真逆なイメージですが、そういう意味で新鮮さはありましたか?
松本:浩介の持つやさしさとかあたたかさのようなものを普段から撮影現場で心掛けていたかもしれないですね。もちろん、穏やかに見えても気持ちはいろいろなことをしているから動きはするんだけれど、僕がいままでやらせてもらった役と比べると─これまでは、テンションの上がり下がりが激しかったり、スピードが速くて起伏が激しい役が多かったかもしれない。浩介は、ゆったりとしっとりと表現するというか、そういうのを意識していたかもしれないですね。
おふたりは今回が初共演ですが、共演する前と後ではお互いの印象は変わりましたか?
松本:初めて共演させてもらったんですけど、すごくインパクトの強いキャラクターを演じているという印象があったので、ちょっと変わった人なのかな…というイメージもあったんです。実際にお会いして話をさせてもらって感じたのは、
上野:台本を読んだときに浩介=松本さんとして読むことができたんですね。私の松本さんのイメージは『きみはペット』のあのキャラクターというか、どちらかというとちょっと孤独で、社交的というよりは我が道をいくようなタイプ、シャープな雰囲気もありました。で、実際にお会いしてみて感じたのは、とても繊細で気遣いのある方だなと。いろんなことに気がつく方です。しかもそれを気づかれないようにこなしてしまうのがすごい。表に立つ方だけど裏からもフォローできる、より作品をいいものにしようとする姿勢がすばらしかったです。自分が想像していた以上に大きな器の方でした。
三木監督は、松本潤史上いちばん鈍くさい松本潤がこの映画にいると言っていました(笑)。
松本:そうかもしれないですね(笑)。ほんと、楽しかったですよ。一番最初に脚本を読ませてもらったときに、自分がいままで演じてきたキャラクターとは違うものを表現できると思ったので、浩介みたいな、気弱な部分はあるけれどしっかりした気持ちも持っている男の子の役で、僕を選んでくれたのは嬉しかったです。
ということは、今まで見たことのない自分がスクリーンにいた?
松本:どうなんでしょうね。日常とか何気ない時間がすごくよく映っていると思うんです。浩介と真緒のふたりの空気感を含めてね。それは、現場にいたときに自分たちもそうだし、監督をはじめ三木組のみなさんがあたたかい現場を作ってくださっていたから。だからこそ、2人がソファで寝っ転がっているところとか、2人並んで歯を磨いているところとか、買い物しているところとか、実際に現場の雰囲気があたたかかったから、というのはあるんじゃないかなと思います。
“初恋”の相手と10年の時を経て運命の再会をする浩介と真緒。2人のような恋愛についてはどう思われますか?
上野:確率的には難しくてパーセンテージは低いかもしれないけれど、それもやっぱりファンタジーであるからリアルに描けるんですよね。こういう話もあるかもしれないって思う人もいるだろうし、自分の初恋の想い出と重ねる人もいるかもしれないし、ビーチ・ボーイズや山下達郎さんの曲の歌詞に共感する人もいたり…年代によってさまざまな受け取り方ができると思います。10年の時を経て運命の相手と再会するなんてありえないよ!というのではなく、真緒と浩介を通じて、これから先、彼らみたいに人を愛せたらいいなぁ、夢を持って生きていけたらいいなぁと、そういうことを感じとってもらえたら嬉しいですね。
10年越しの再会、ずっと想い続けているという設定は、松本さん的にもグッときましたか?
松本:グッとくるでしょう?多分どの世代にも響くと思います。いろいろな経験があればあるほど、懐かしさとか自分の経験とか過去の想い出を思い出すと思うし。自分がドキドキした記憶とか、蘇ります。
本当に、純粋な気持ちを刺激される映画ですよね。松本さん自身は、浩介を演じて、この映画の世界観を生きて、完成した映画を観て、純粋な気持ち度というのは何%ぐらいアップしましたか?
松本:そうですね…。僕の場合は、もともと純粋な気持ちが大きいので(笑)、以前と比べて5%ぐらいですかね(笑)。でも、誰かと一緒に過ごす時間のすばらしさ─それは、男女だけでなく、友だちだったり家族だったりも含まれると思うんですけど、人と関わっていることのあたたかさ、大切さをすごく感じられる作品です。
今回の作品、とても幅広い世代に響きますね!
松本:そう思います、そうであって欲しい。これから恋愛をするような10代の方たちも、いま恋愛している人たちも、ドキドキしている気持ちを重ねながら観られる。自分もこういう恋愛できたらいいなと思ってもらえるような作品だと思うし、また、経験を重ねた人にとっては(自分の恋愛を)懐かしく思いながら、やっぱり人を愛するっていいことだなって思ってもらえると思います。
最後に、映画をこれからご覧になる方に一言お願いします。
上野:この『陽だまりの彼女』は、観終わったあとにあたたかい気持ちになる、しあわせな気持ちになる映画です。ぜひ、浩介と真緒に会いに来て下さい!