JR北海道:「基準変更知らぬ」…担当者に引き継がれず
毎日新聞 2013年09月28日 15時00分(最終更新 09月28日 15時04分)
レールの保守管理をめぐって、JR北海道のミスが止まらない。保線担当部署が補修を放置していただけでなく、最長で28年間にわたり、レール幅の検査で誤った整備基準値が適用されてきた。旧国鉄時代の1985年に新型レールが導入され、カーブのレール幅も変更されたことを十分認識していなかったためだ。その背景を現場で取材すると、若い社員に技術が引き継がれにくい人員配置や保線作業が優先されない社内事情が見えてきた。【遠藤修平、森健太郎】
「新旧のレールで検査基準が異なることは、職場でも話題にならない。若い人は知らないかもしれない」「基準が二つあるとは知らなかった。教わった記憶もない」。JR北海道の複数の保線担当者は、こう証言した。
JR各社の在来線では旧国鉄時代から現在まで、直線のレール幅は1067ミリと決められている。だが、旧国鉄時代は蒸気機関車など大型車両が多く、曲がる際には遠心力が強く働くため、例えば半径200〜600メートルのカーブでは最大5ミリの「遊び」が設けられていた。
新型レールを導入した85年、国鉄は車両の走行性能が向上したことなどから、半径200〜600メートルのカーブでは「遊び」がなくても安全に曲がれると判断し、新たにレールを敷設する際は幅を直線に合わせる一方、レール幅の限界値は従来と変えなかった。その結果、新型レールでは整備基準値(許容できるレール幅の広がり)が20ミリから25ミリに広がった。
JR北海道の線路の総延長約3000キロのうち、85年以前の旧型レールは現在も168キロある。今回は44の保線担当部署のうち、10部署が旧型レールの整備基準値として、20ミリではなく新型レール用の25ミリを誤って適用。結果的に5ミリ甘い基準で検査していた。
二つの基準はなぜ徹底されなかったのか。背景には、保線担当者の異動事情があるとの指摘もある。誤検査が発覚した10部署の担当路線は、札沼線や留萌線など旧型レールが多いローカル路線が含まれる。ところが、保線担当社員は新人時代を新型レールが多い大規模部署で過ごすことがほとんどだ。
JR北は誤検査を発表した25日の記者会見で、二つの基準について「新人研修で教え、詳しい内容は仕事の中で学ぶ」と説明したが、鉄道関係者は「旧型レールの扱いを知らないまま、新型の基準のみで検査してしまった可能性が高い」と指摘する。