幸運
「それにしても、『ニフラム』ってなんなんだろうね」
「結論を出すには、まだまだ早いと思うよ。いますぐ結論を出そうと思ったら、特定の人物に血を吐かせる呪文、ということになってしまう気がする」
「……つぐみ専用の呪文なのかな」
「まあ、つぐみちゃんの言うように、体内に潜伏している病原菌を退治する呪文なのかもしれない」
「じゃあ、唱えていたら、病気にならないとか?」
「そういう可能性も信じたいね。今後もニフラムの恩恵を受けるであろう僕たちは、まったく病気にならないことになる」
「なるほど」
「とにかく、検証の余地はまだまだあるわけだよ」
コドラが負けて、はえおとこが勝ち残った。
「負けちゃったね」
「なに、この程度は想定の範囲内だよ」
ぼくと葉一さんはコドラ押しだった。
何度も何度もこなしていると、好きなモンスターと嫌いなモンスターが出てくる。はえおとこに賭けるくらいなら、ぼくらはコドラに賭けて敗北を選ぶのだ。
「次は……うん。これはメタルスコーピオンだね」
連続攻撃ができるので、たまにしか負けない。
ぼくは迷いなくメタルスコーピオン(4倍)を選んだ。
「とにかく今後とも、リオンくんはいろいろと試すべきだとは思う」
「……うん」
「……また悲鳴が聞こえるかと思うと、気安く唱える気になれないのはわかるけどね」
ぼくも葉一さんも、つぐみのような女の子が他にいるとは思っていなかったけれど、ぼくはもう、以前のようにワクワクした気分で呪文をとなえることができない。
よくないことが起こるかもしれない、そう思えて不安になるからだ。
「まあ、のんびり気楽にやっていくのが一番だよ」
「そうだね……うん、そうするよ」
ぼくたちは元気だった。どれくらい元気かというと、つぐみの話ができて、『ニフラム』の話ができるくらいに元気だった。
ぼくらがここまで元気になれたのは、ぼくらがものすごくツイていたからだ。
3000枚ものコインを賭けた、おおみみず(11倍)が勝ち残り、ぼくらは一気に30000枚以上のコインを手にすることができた。ゆったりと力強いガッツポーズをとった、葉一さんとぼくは、そのあとも順調にコインを集めることができて、はやぶさの剣に手が届きそうなところまで来ていたのだ。
「やっぱりメタルスコーピオンは強いね」
「ああ、まったくだ。次は……ひとくいサーベル(5倍)、おにこぞう(3倍)、コドラ(3倍)か」
コドラ押しのぼくらは勝利を手にした。
ぼくたちは本当に運がよかった。
こんなところで運をつかってもよいのかと思うくらい、ぼくと葉一さんはツキまくっていた。
ぼくたちはもちろん、連戦連勝とはいかない。十回連続で予想を外すことだってあったし、5000枚を賭けた大勝負で、
ピクシーA(5倍)
ピクシーB(5倍)
ピクシーC(5倍)
ピクシーD(5倍)
という予想のつけられない運任せの戦いを強いられて負けたこともあった。
同じような大勝負、必ず引き分けになってドローになっていた、
おおめだまA(100倍)
スペクテットA(100倍)
スペクテットB(100倍)
おおめだまB(100倍)
の戦いで、スペクテットBが勝利を収めたときのショックはかなりのものだった。
それでもぼくらは、三時間足らずという短い時間で、はやぶさの剣と星降る腕輪を二つ手に入れることができたのだ。
すっかり元気を取り戻したので、ぼくらはドラクエⅣの冒険をすすめた。
「葉一さん、はやぶさの剣ってほんとにすごいね」
「そうだろうそうだろう。序盤でこの剣は反則級の強さを誇るからね。武器を買わなくていい分、防具にお金もつかえる。もはやレベル上げすら不要といえよう」
ぼくらは盛り上がり、夢中になって冒険をすすめた。
いろいろなことがあったけれど、日曜日の最後のほうは、楽しい時間を過ごすことができたと思う。PS2がディスクを回さなくなって、深い悲しみに沈むことにもなるのだけれど、それはまた、このときは知らない未来の話なのだから。
ここにきて、キーワードに「ドラクエ」を追加しました。
ドラクエⅩがパソコンでどうのこうのという、この時期、このタイミングにおいて、ドラクエⅨ、はじめました。
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