強殺:1審無罪を破棄、61歳に無期判決…福岡高裁
毎日新聞 2013年09月20日 13時45分(最終更新 09月20日 23時30分)
大分県の旧清川村(現豊後大野市)で2005年、山口範子さん(当時61歳)を殺害したなどとして、強盗殺人、窃盗、住居侵入の罪に問われた大分市の無職、伊東順一被告(61)の控訴審で、福岡高裁は20日、1審・大分地裁の無罪判決(求刑・無期懲役)を破棄し、求刑通り無期懲役を言い渡した。弁護側は上告した。
服部悟裁判長は1審が信用性を否定した捜査段階の自白調書を「十分に信用できる」と認定。「殺害方法は執拗(しつよう)で残忍」と指摘した。
伊東被告は捜査段階で自白と否認を繰り返し、1審では無罪を主張。伊東被告と事件を直接結びつける証拠はなく、自白調書の信用性が争点だった。
服部裁判長は「供述は自白以外の証拠で認定できる事実に符合する。体験者でなければ語れない具体性に富む」と信用性を認めた。
更に、控訴審で提出された、殺害された山口さんの車から伊東被告のDNA型が検出されたとする鑑定▽山口さん宅の土間にあった伊東被告の靴の跡▽事件7日後に山口さんの買い物券を持っていた−−などの状況証拠から有罪と認定。動機について「金品を物色した際に帰宅した山口さんにとがめられ、逮捕を免れるため殺害した」と断定した。
高裁判決によると、伊東被告は05年3月8日、顔見知りで1人暮らしの山口さん方から現金を盗んだ。また、同14日にも山口さん方に侵入、コンクリート片で頭を殴るなどして殺害したうえ乗用車や商品券などを奪った。
1審・大分地裁判決は10年2月▽現場にあった血痕の付着状況が供述内容と食い違う▽盗んだとされる車のキーが供述した遺棄現場から見つからなかった−−などから、自白調書について「供述に不合理な変遷があり、他の証拠とも整合しておらず疑問が残る」と信用性を否定。状況証拠についても「被告の犯行と推認できない」と判断していた。
福岡高検の白浜清貴次席検事は「主張、立証が理解された」とのコメントを出し、伊東被告の弁護人、福島康夫弁護士は「有罪ありきの都合のいい解釈だ」と判決を批判した。【山本太一】