「会長なんとか助けてください。お金はいくらかかっても」
そう言ってバーニングプロダクション社長の周防郁雄が泣きついてきたのは、彼のトラブル処理や身辺警護を始めて、2年も立たないうちだろう。バーニング事務所への拳銃事件以降、周防は、我々が入る麻布十番のエフプラザの部屋に来ては賭け麻雀(メンバー、プロダクション社長:小○□▽朗、コスメショップオーナー:前□○等、俳優:S.H)に興じて、ごきげんな様子の時が多かったが、この日は相当狼狽していた。
聞くと、ある組織の組員にまずいビデオを握られているという。そのビデオというのは、周防と当時、モーニング娘のメンバーだった女性との不適切な関係がはっきりと映っているものだそうだ。つまり、孫ほどの年齢であるタレントのおねえちゃんとええ事しているところを、バッチリ撮られたというわけである。”芸能界のドン”といわれる人物しては脇が甘すぎる失態じゃないか。
それに最近「週刊文春」も記事にしていたが、周防がNHKの内藤慎介プロデューサーへの肉欲接待の時に斡旋していたのも、別のモー娘のメンバーだった。よっぽどお気に入りだったんだな。そんなモー娘との決定的現場のビデオを押さえた組員の目的は、もちろん金だ。そもそも恐喝されたなら、周防も警察に駆け込めばいいものだが、そうもいかない事情があるわけだ。周防はすでに、その組員にいくらか金を払うなどして火消しに必死だったようだが、ビデオのコピーは手元にあるものの、原本が相手に握られたままとのことで、「どうにか(流出を)止めてください」「1億円もってきますから」と、焦り倒して、泣きついてきたわけである。周防はこんなことも言っていた。「女性にも相手(彼氏のことか?夫のことか?)がいるから、迷惑をかけられない。かわいそうだから、どんなことがあっても止めて下さい」と。
その組織というのは、九州などでも活動する指定暴力団傘下の組だった。そこの組長はこちらも知っている仲なので、口利きしてやることにした。キャピタル東急で示談交渉を設定。組長に周防と話し合いをしてもらったが、当日周防はある格闘技界の実力者を連れてきた。用心棒のつもりだったのか。こちらに用心棒をお願いしておきながら、別の用心棒を連れてくるというのも日和見主義の周防らしい。しかも、周防は約束した1億円を用意せず、どうするのかと思ったら「今動いている仕事がうまくいけば、数億円は渡せるので、それでよろしいでしょうか」と、調子のいい話を出してきた。こちらも人が良かったから、その話を信じたし、その組長もこちらの顔を立ててくれて、その後、ビデオが流れることはなかった。芸能界のドンのスキャンダルは闇に葬られ、モー娘も救われたわけだ。ところが、それから10年も経とうかというのに、周防はその金を用意するどころか、「そんなことは言ってない」と逃げ回っている。仲介してもらった組長にも申し訳が立たない。これでは、1本だけ残っていると言う噂があるビデオのコピーがYouTubeにアップされるのも近いかもしれない。こういう男の風上にも置けない人物が芸能界を牛耳っているわけだ。老婆心ながら、業界の未来を心配してしまう。