5月29日の交流戦、楽天ベンチ前で星野監督(右)と握手を交わす桧山【拡大】
ユニホームを脱ぐことを決めた『9・7』に、闘将と契りを交わしていた。携帯電話の向こうから“宣戦布告”された。恩師と愛弟子の約束-。実現させるべく、桧山が最後の力を振り絞る。
「(星野)監督と話したときに、そう言われたわ。そうなったら、変な感じ方をするやろね」
3週間前の会話を思い出し、目を細めた。「そう」とはもちろん、阪神vs楽天の頂上決戦だ。2003年に選手会長&主軸として18年ぶりのリーグ優勝に貢献した男と、その男たちによって胴上げされた指揮官の激突。しかも桧山にとっては、日本シリーズとなれば最後の花道だ。野球ファンにとっては、胸躍るドラマとなる。
桧山は引退会見で「やり残したこと」を問われて「日本一です」と言い切った。「全力で、可能性がある限りは優勝に向かって最後までプレーするのが、プロ野球人」。もちろん、その言葉の意味するものはセ・リーグ制覇した上での日本一だった。ただ、優勝は逃しても、頂点への可能性はまだ残されている。
前日26日には、10月5日の引退試合・巨人戦でバットを置くことはないという首脳陣の構想が判明した。残された仕事。まずはファーストステージで広島を倒し、ファイナルで強い巨人を倒す。険しい道のりだが、これ以上のやりがいはない。
「全力でいく? そんな感じやね」
短い言葉に気合をにじませ、名古屋入りした。チームは9カード連続勝ち越しなしと低調気味。大一番へと挑む前に、まずはそのバットで、猛虎を蘇らせる。
(紙面から)