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松本零士と荒牧伸志のふたりが語る映画『キャプテンハーロック』

松本零士の英雄が、3DCG映画となって、ヴェネツィア国際映画祭で上映された。ただしハーロック自身は、神秘的な存在として、表にあまり出てこない。WIRED.itによる原作者と監督へのインタヴュー。

 
 
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TEXT BY GBRIELE NIOLA
TRANSLATION BY TAKESHI OTOSHI

WIRED NEWS(ITALIA)




キャプテンハーロック -SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK-』は、東映アニメーションが、これまでで最も高額なプロジェクトを託した主人公だ。3,000万ドルもの費用をかけて、5年の制作期間を要した(制作準備3年、実制作期間2年)長編CGアニメ映画は、ヴェネツィア国際映画祭で華やかに紹介され、特別招待作品として上映された。会場には荒牧伸志監督(『アップルシード』アニメ版のクリエイターで、パワードスーツやメカの分野では日本で最も偉大なデザイナーだ)と、原作者松本零士(この映画ではアドヴァイザーとしてのみ参加)も登場した。

日本のアニメにはよくあることだが、映画では主人公とその来歴、彼の周りにいる登場人物の多くを変更しているが、当然のことながら、その魂や外見、考え方などは元のまま残している。

『キャプテンハーロック -SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK-』(3D制作されている)は、軍事同盟「ガイア・サンクション」が厳しい秩序を維持し、地球(すべての人が住むには人口が多すぎるので無人となった)を近づくことのできない聖地へと変えた世界を語っている。一握りの人々だけが、このような状況に反旗を翻す。ハーロックの仲間たちである。

松本零士は高齢(75歳)ということもあり、忌憚なく話をしてくれた。なぜハーロックをリメイクすることになったか、荒牧のヴィジョンに満足しているかを彼に尋ねた。


松本零士(以下:松本) このヴァージョンはプロトタイプとして考えなければなりません。このCG版ハーロックは試みに過ぎず、最終的なものではありません。おそらく多くの変更が必要で、改善すべきことがあるでしょう。しかし重要なのは、ハーロックのファンがこれを認めてくれて、幻滅しないことです。

──荒牧監督に変更を求めましたか?

松本 はい。ラストに関してはそうしました。物語に巻き込まれる若い英雄がいますが、わたしは彼がハーロックの地位を奪うように見えることは望みませんでした。若いハーロックが生まれるような印象を与えるのはよくないと思いました。そこで、ふたりの違いをはっきりさせるように求めました。

これに関して、なぜこの映画ではハーロックが準主役のようなのか、まるで伝説のように現れては消える神話のようなのか、その一方で、なぜ本当の主人公が新しいオリジナルのふたりの人物なのかということは、荒牧監督に尋ねました。

荒牧伸志(以下:荒牧) この映画の主人公がハーロックではない理由は、彼があまりに完成された人物だということにあります。つまり、彼は絶望せず、過ちを犯さず、彼を成長させることのできる新しい体験は存在しません。彼は象徴的存在なのです。ハーロックのような人物を映画で生かすのは非常に困難です。人々が観るのが好きな、古典的な英雄物語をつくることができないのです。こうした理由から、わたしたちは若い登場人物を登場させました(編注:戦争の敵陣営に入ったふたりの兄弟)。

──この映画では、ハーロックは不死の存在で、彼の性質(本物か、亡霊か、非物質か)はよくわかりません。どのような考えから人物をつくり出したのですか?

荒牧 ハーロックが何者なのかについての解釈は、広く開かれています。そのことは、彼が亡霊であることを意味しません。観客が、思い通りに想像してくれればいいのです。ハーロックは理想的な人物像であり、英雄であり、誰もが彼のようでありたいのです。

 
 
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