夏目漱石論の射程〈崇高〉と〈帝国〉の明治
森本 隆子:著
シリーズ・叢書「ひつじ研究叢書(文学編) 6」の本一覧
発行:ひつじ書房
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A5判
定価:円+税 総額を計算する
ISBN 978-4-89476-646-4 C3091

奥付の初版発行年月:2013年03月
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紹介

「崇高」(サブライム)は、近代における〈風景の発見〉を導き出す機軸となった美意識である。アルプスに象徴される雄大で荒涼とした自然を前に、死の恐怖と紙一重に獲得されるスリリングな喜びは、自己超越を志向する倒錯的な観念の世界を形成し、やがては明治という男性中心主義的な〈帝国〉を作り上げてゆく快楽的なイデオロギー装置へと化してゆく。始原としての『日本風景論』から『破戒』『野菊の墓』へ、差異として析出されてくる夏目漱石論と重層させながら、その展開の軌跡を辿った。

目次

はじめに

第1部 転倒の美意識〈崇高〉の力学圏―重昂・漱石・自然主義
第1章 風景と感性のサブライム―志賀重昂から夏目漱石まで
第2章 『破戒』の中の〈崇高〉―ホモソーシャル連続体の生成と勝利
第3章 〈崇高〉の衰微―『野菊の墓』における〈性欲〉の観念化と〈文学〉の成立
第4章 「雲」をめぐる風景文学論―『武蔵野』の水脈

第2部 異性愛と植民地―もう一つの漱石
第5章 『行人』論―ロマンチックラブの敗退とホモソーシャリティの忌避
第6章 夏目漱石『門』の文明批評―〈異性愛主義〉の成立と〈帝国〉への再帰属
第7章 漱石の中の中国―帝国のシステムと『満韓ところどころ』
第8章 米と食卓の日本近代文学誌

第3部 近代資本主義の末裔たち―村上春樹とその前後
第9章 文学のなかの異性愛主義(ヘテロセクシュアリズム)―その陥穽と攻略・漱石からばなな、江國まで
第10章 村上春樹『ノルウェイの森』の〈語り〉が秘匿するもの―出自としての中産階級・「ハツミさん」の特権化
第11章 『パン屋再襲撃』―非在の名へ向けて
第12章 『方舟さくら丸』論―二つの〈穴〉、あるいはシミュラークルを超えて
第13章 二つのエクリチュール―ポスト構造主義批評の蓮實重彦的戦略
第14章 女性作家の時代へ

初出一覧
あとがき

著者プロフィール

森本 隆子(モリモト タカコ)

静岡大学人文社会科学部准教授。専攻は日本近代文学。主な著書・論文に「『破戒』の中の〈崇高〉」(『島崎藤村研究』第40号、双文社出版、2012年)、『村上春樹作品研究事典 増補版』(「『国境の南、太陽の西』」ほか四項目を執筆、鼎書房、2007年)など。

上記内容は本書刊行時のものです。
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