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27 Sep 2013 12:10

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なぜランキング番組は信用してはいけないか

プレジデント 9月25日(水)11時45分配信

■「黒い羊」に注目せよ! 

 テレビ番組、新聞、雑誌など、ありとあらゆるメディアで「ランキング」が氾濫している。ランキングを提示されるといかにも信憑性があるように感じてしまうが、結局、決め方がいい加減なら順位もおのずといい加減なものになる。

 以前、雑誌でハンバーガーの「おいしいお店ランキング」を見かけたことがある。読者はこうしたランキングを見たとき、3位より2位、2位より1位のほうがおいしいと直感的にとらえるかもしれない。しかしそのランキングでは有名なチェーン店が並ぶなかに、ひとつだけ、数千円もする高級ホテルのバーの一品が交じっていたのだ。はたして数百円も出せば食べられるハンバーガーと数千円もするハンバーガーを、同じ土俵に乗せて一元的に比べられるものだろうか? 

 そうしたデータを真に受けないために、ランキングを見る際はいくつかのポイントに気を配りたい。

 ひとつは「同じ条件のものを比べているのか」。質量が違うもの、時間や地域のズレがはなはだしいものを比べても、それは正確な順位とはいえない。データ作成者の印象によって漠然とランク付けされたものと考えるべきだ。

 次に「誰に決めさせているのか」。年末によくミステリー小説のランキングが発表されているが、「はたしてベストを決めるのに値する読者が選んでいるのか」に着目してみる。プロの作家や書店員ならある程度の眼力があるかもしれない。だが一般のファンも参加している場合、偏りが生まれる可能性もある。

 またメディアでランキングが発表されるということは、ランキングをつくっている人間がどこかに存在し、特定の意図に多かれ少なかれ誘導しようとしている。そう考えると、組織票がないか、特定の選択肢が上位に来るような恣意的な質問がないか、などにも気を配らなければいけない。

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なぜランキング番組は信用してはいけないか

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なぜランキング番組は信用してはいけないか
「××ランキング」を見る際の4つの鉄則!

 最後に「特殊な事情はないか」。私はランキングを見る際、アウトライヤー=「黒い羊」とも呼ばれる統計において大きく外れた値、つまり例外的な存在に注目するようにしている。たとえば書籍ベストセラーでは、上位に人気作家や宗教家の本が登場することが多い。しかし固定読者が多い人気作家や購買動員力のある宗教家の得票数が伸びるのは当然のこと。そこで私がおそらく質が高いだろうと予想するのは、世間の知名度が低く、なおかつ値段が高いにもかかわらずランキング入りしている本――つまりアウトライヤーである。あまり手に取られない本にもかかわらず選ばれたのは、その面白さが口コミなどで広がり、読んだ人のほとんどが投票した可能性が高い、と考えてみる。

 なぜ白い羊の中に「黒い羊」が入ってきたのか? 

 そうやってアウトライヤーが存在する理由を推測していくと、ランキング作成の意図から漏れた事実の部分、ひいてはどういう条件でランキングがつくられたのかが見えてくる。

 最近テレビで「ランキング番組」をよく見かけるが、こうしたデータは真剣に受け止めるものではなく、あくまで娯楽として楽しむ気持ちで接するのがちょうどいいのではないか。

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大阪商業大学学長、学校法人谷岡学園理事長 谷岡一郎
1956年、大阪生まれ。慶應義塾大学法学部を卒業後、南カリフォルニア大学行政管理学修士課程を経て、社会学部博士課程を修了。専門は、犯罪学、社会調査論。『「社会調査」のウソ』など著書多数。
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大阪商業大学学長、学校法人谷岡学園理事長 谷岡一郎 構成=鈴木 工 撮影=小原孝博

最終更新:9月25日(水)11時45分

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