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昨夜（25日）の外国特派員協会(FCCJ)での総会（GMM）を固唾をのんで見守っている集団がいた。東京地裁にFCCJを訴えている原告団の人たちだ。バイロウ改訂（改悪）で「訴訟をする会員は即刻会員資格停止」を盛り込む決議をとる予定だった。改訂に怒った大物たちがジョージ＆ルーシー内閣にプレッシャーをかけたのだろう。玉虫色の解決と言うか、自身の破滅を逃れた政治的解決と言うか下記のようになった。
「これから（今日以降）FCCJを訴訟する会員は資格を停止する」と。つまり既に訴えている人たちには手をつけない（つけられないのだが）と言う腰砕け結論だ。振り上げた拳をどう下ろそうかと一生懸命に考えたに違いない。これでジョージもルーシーも面子は潰れない。
ヒューマントラスト有楽町で公開中と言うが午後4時40分の一回だけなのでいつも満席売り切れ。2日前にチケットを買い連休最後の日（22日）に見た。狭い小屋はやはり満席だった。
僕は日活ロマンポルノ映画ファンだったので沢山見ていたが、中でも田中陽造と荒井晴彦の師匠と弟子、二人の作品は構成と言いストーリーと言いフィロソフィーと言い、裸以上に感激していた。荒井晴彦が神代監督と組んだ「赫い髪の女」などは30年以上も前の宮下順子をはっきり覚えている。
以来荒井の作品は見続けている。ロマンポルノを卒業し日活時代の相棒、根岸吉太郎監督と組んだ立松和平原作のトマト栽培に賭ける青年の姿を描く「遠雷」は傑作だった。寺島しのぶが輝いた「ヴァイブレイター」、原田芳雄の遺作となった「大鹿村騒動記」などどれをとっても傑作だ。
映画の出来不出来は8割方、脚本で決まる。荒井の書いた映画は安心して見られる。青山信治監督と組んだこの「共食い」も原作の芥川賞授賞作品の原作以上に魅せてくれる。
田中慎弥が芥川賞を「貰ってやる」と暴言を吐いた同名小説を、「東京公園」や「サッド・ヴァケイション」などの青山真治監督が映画化。山口県下関市を舞台に、セックスの際に女性の首を締め、顔を殴りながら気持ち良くなる性癖を持つ父親と、そんな父親の血を持つ事にいらだちを募らせる高校が過ごす一夏の出来ごとが展開する。
主人公の少年、遠馬を「仮面ライダーW」の菅田将暉が繊細に演じる。仮面ライダーのような単調の芝居しか出来ないのかと思っていたが菅田はなかなかの役者だ。それに実母を演じる田中祐子が凄い演技を見せる。最初は父親、円（まどか）の暴力に耐え遠馬を産んだが、その後弟や妹かを妊娠した時円の血をこれ以上受け継ぐ子供は要らないと堕胎し別居をして一人魚をさばく仕事をしている。
昭和63年夏。「父は僕が17歳の時に亡くなった」と言う淡々としたナレイションが後で重大な意味を持つことが分かる。
高校2年生の遠馬（菅田）は父親、円（光石研）とその愛人・琴子（篠原友希子）とともに山口県下関市に暮らしていた。遠馬の実母の仁子（田中）は川を挟んだ向こう側で魚屋を営んでおり、遠馬は時々仁子に魚をさばいてもらいに行っていた。日ごろから父親と琴子の情事を目にしている遠馬は、セックスの際に父親が女に暴力をふるうことを忌み嫌っていた。しかし幼なじみの千種（木下美咲）と何回もセックスする内に、つい父親のような暴力的なセックスをしてしまい、自分にも父親の血が流れていることに愕然とする。
千種は怒って連絡を絶ち2人の関係が悪化してしまう。父親の飽くことなき暴力的セックス。毎日自慰に明け暮れる高校生。男たちは性を求めて野獣化している。
台風が近づいてきて大波が岸壁を越え町中が水浸しになる中、琴子は身重の身でありながら父親と別れる決心をして家を出る。
怒った父親が琴子を探していると、遠馬と仲直りしようと神社で待ちわびる千種を見つける。千種は遠馬を誰もいない暗い神社の屋内で待っていたのだ。殴られ首を絞められレイプされて腰が抜け立てなくなっている千種を助け起こした遠馬。
「あの衝動は抑えられないからな」とうそぶく父親に殺意を抱く遠馬を押し止める仁子。出刃を一本懐にのんで雨の中を出かける仁子を止めようとする遠馬。「やらせなさいよ」と千種は遠馬に抱きつき動きを止める。
このシーンは恋人であり母子である遠馬の複雑な感情と怒りが入り混じる凄絶なシーンで、素晴らしい。仁子の決意、千草の怒り、遠馬の逡巡、これらの描写は最近の映画では秀逸の場面だ。
ヒューマントラスト有楽町他で公開中
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