「日本の朝鮮統治」を検証する 1910-1945
ジョージ・アキタ ブランドン・パーマー
草思社
★★★☆☆

「差別撤廃 東京大行進」なるイベントが22日に行なわれたらしい。普通のメディアは取り上げなかったので知らなかったが、その賛同者一覧が反原発派と重なる程度の低い「文化人」ばかりなので「みんなまとめて韓国へ行ってよ」とからかったら「レイシスト!」とかいう程度の低いツイートがたくさん来た。

もちろん新大久保などで行なわれている一部の日本人の韓国人へのいやがらせはよくないが、韓国の大規模な反日デモとは比較にならない。それも慰安婦や領土問題などについての事実無根のスローガンを掲げる国家ぐるみの反日運動で、まるでそれを応援するような「大行進」は彼らに誤ったメッセージを送るものだ。問題は「差別撤廃」ではなく、彼らの反日感情を是正することである。

本書は、韓国の「民族主義史観」を具体的に検証しながら、そのほとんどが史実に反することを明らかにしている。もちろん日本が朝鮮半島を35年間にわたって支配したことは批判されてしかるべきだが、日本がやらなかったらロシア(のちにソ連)が朝鮮半島を支配し、大量虐殺をしただろう。日本の統治は植民地支配というより、アジアで最初に近代化した日本が朝鮮も近代化しようという「同化政策」で、結果的には赤字経営だった。

ハーバード大学のエッカートやソウル大学の李榮薫でさえ書いているように、朝鮮総督府の統治は内地とそれほど変わらないもので、本書によれば「九分どおり公平」だった。ただし1938年以降、戦時動員が始まってからは(内地と同じように)苛酷な軍事的統治になった。

いまだに韓国人の反日感情が強い原因は、儒教文化圏の中で格下とみていた日本に支配されたことで民族の誇りが傷ついたのだろう、と本書はいう。そして戦後の軍事政権がそれを民衆の不満の「ガス抜き」に利用して、民族主義史観を教育やメディアを動員して植えつけた。現在の朴大統領も朴正煕の娘だから、その路線を大きく外れることはないだろう。

しかし実は、日韓条約を結んだのは朴正煕である。朴大統領の宿願は父の名誉回復だというから、独裁者だった一方、日本との経済関係についてはプラグマチストだった朴正煕の名誉回復に日本が協力することが、もしかすると日韓関係を打開する糸口になるかもしれない。