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必殺仕置屋稼業 第9話 「一筆啓上偽善が見えた」

あらすじ

戯作者・文蝶の黄表紙が大奥の風刺であるとされ、作品は全て焼却処分。
文蝶は手鎖の刑となった。
文蝶の本を売り歩く貸本屋に化けていた隠密廻りの孫兵衛は、完全に文蝶の筆を折らせるために汚い手を使う。
その犠牲になったのが文蝶の妻。
市松はこの夫婦から挿絵のモデルの仕事を引き受けていたため、文蝶に仕置屋という裏稼業があることを教え、仕置きの依頼を受ける。

感想

保利吉紀さん脚本、松野宏軌さん監督、といえば、先日鑑賞させていただいた「必殺スペシャル・秋 仕事人VS仕事人 徳川内閣大ゆれ!主水にマドンナ」のコンビでもあります。

「一筆啓上偽善が見えた」の脚本のどこが良いのか。

奥さんが孫兵衛の手下に襲われて自分も大怪我。
ぼーぜんとする暗い部屋の二人。
でも文蝶はこんな風に言う。

文蝶 「お菊、あれはおこんこんはんの仕業やで。わいは、ちゃんと尻尾を見たがな。お菊があんまり可愛いよって、ついつまんでみとうなったんや。今度また来よったら、油湯に毒入れたろ。な。はは。」

悪人面で髭のある関西弁の文蝶、いまひとつどんな人間かつかみにくいキャラとして登場するんだけど、この台詞で彼の奥底にある優しい心が理解できる。
酷い目にあったとき、そばにいる男性にこんなこと言われたら女性だったらホロリとくるさね。
ここで彼に なんてひでえことしやがる、神様なんているもんか! とか、 気にすることはない、俺はお前を愛してるぜ 的な台詞を言わせたらどれだけ安っぽくなるか。

自分の好みはさておき、言わせるべき台詞と、言わせたらいけない台詞ってのはこういうことだと思う。
もちろん余分と思えるシーンもそこそこあるけれど、主水の台詞にしろこれを言わせちゃいけないっていう台詞は一つもなかった。
スペシャルにおける脚本家の心が全くこもってない恋愛ストーリーを思うと、脚本がまずくなっていったのはああいう脚本しか通さなくなったプロデューサーの責任か………いや、深く考えなくてもそうなのでしょうけど。

さてこのお話、孫兵衛のただ者じゃない雰囲気。

長谷川明男さんて必殺シリーズでいろいろな顔を演じるね。
乱心系でもなく、強欲商人系でもなく、エロ目的の旗本系でもなし。
確かに悪人なのに、象徴的な悪人の風情ではない。
どこかに無理矢理入れるとしたら、策士の番頭系…?

何かこう、江戸の中では一般人に近いのに、台詞や表情に締まりがあってカッコイイんですよね~。
一度殺し屋のメンバーに入ってほしかったな。

捨三ってたまに見ると非常にいい男ですねー。
主水は表でも裏でも全身捜査官と前回書いたけど、表の捜査は使えない非・イケメンな亀吉と。
裏の捜査は使える色男・捨三と。
この本来逆であるべきコントラストがたまらんですな。
でも亀吉は亀吉でなーんか、可愛いんだ。
そして必殺シリーズ数多くあれど、主水に絶対服従してたのは捨三だけで、実はこれは非常に味わい深く、興味深いところであるのですよ。

今日は印玄の犬っぽいところがよく出てた。
捨三と風呂屋で将棋を指してる場面で

印玄 「お願い、ねえ遊んでよ、お願い」

そこにヌラ~~~っと市松が現れて、捨三に薄気味がられる。

捨三 「印玄、だまされちゃいけねぇよ、こいつは仕事の催促に来たんだ。」

市松 「捨三」

捨三 「なんだよ。なんだなんでぇ」

この時、市松は一瞬笑うんだけど、あれ?珍しいと思った。
なんで笑ったんだろう。
捨三をからかって楽しんでる?

なんだかいい雰囲気。
この感じ、確かに仕事人でも使ってるなぁ。
上記スペシャルのやりとりでも使ってたと思う。
でもさ、後の作品を見るとき、私はいつもファイトクラブのノートン先生のこの台詞を思い出すんだよ-。

I couldn't sleep. With insomnia, nothing's real. Everything's far away. Everything's a copy of a copy of a copy .....

仕置屋はやっぱり悪人が良いです。
手下も仕置屋らしく、悪い奴っていうよりも性格が強烈で笑えました。
孫兵衛の反撃は素早く、どう見ても主水よりも切れ者のように見えたので、主水が殺されないのが不思議でした。
そういえば木原さんしかり、仕置屋は悪人がとても強そうなのも特徴かもしれない。

キャスト

市松/沖雅也
印玄/新克利
捨三/渡辺篤史
亀吉/小松政夫
中村りつ/白木万理
中村せん/菅井きん
おこう/中村玉緒
中村主水/藤田まこと

ゲスト

津田京子
長谷川明男
寺田農 

スタッフ

脚本/保利吉紀
監督/松野宏軌

プロデューサー/山内久司、仲川利久、桜井洋三
音楽/平尾昌晃 編曲/竜崎孝路
撮影/石原興
美術/川村鬼世志
照明/中島利男
ナレーター/草笛光子 作/早坂暁

主題歌

「哀愁」 

製作年

1975

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