◆開業30年記念の調査に記者同行
滝の水が降り注ぐ中、高さ約14メートルの足場を拠点に未探索地を調査する学生=浜松市北区引佐町で
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ことしで開業30周年を迎えた浜松市北区引佐町の観光鍾乳洞「竜ケ岩洞」。節目を記念して、観光客がいなくなった深夜に、まだ探索できていない箇所の調査と測量が行われた。鍾乳洞探索なんてめったにできない経験。2日間にわたった調査の初日、記者も同行して地底の神秘に触れた。
今回調査したのは鍾乳洞観光の目玉である「黄金の大滝」の滝口の奥。竜ケ岩洞の小野寺秀和支配人(60)によると、落差は約30メートルで、地底にある日本最大級の滝だが「年中枯れることのない水の源が分かっていない」という。
調査は小野寺さんのほか、30周年を記念したドキュメンタリーを撮影している番組CM制作会社「クロオビプロジェクト」(同市中区鴨江)と静岡大探検部の学生ら計6人で実施。滝つぼから組み上げた高さ14メートルの足場が拠点になる。記者もヘルメットにかっぱ、腰には命綱を結び、小野寺さんに続いて足場のはしごを上った。
覚悟はしていたものの、容赦なく水が全身に降り注ぐ。かっぱの隙間から水が染み込む。外はまだ残暑厳しいのに、寒い。滑る。「落ちたら終わりだ」と言い聞かせ、人が1人やっと通れる隙間を慎重に上った。
足場の一番上に立つと、滝が間近に迫り、圧倒される。ライトに反射して怪しく光る岩肌など、普段目にできない世界が広がり、寒さからではない身震いを感じた。
頂上からは、さらに8メートルのはしごが滝口に伸びている。30年前に一度だけ滝口の中に足を踏み入れた経験のある小野寺さんによると「入ってすぐにくぼ地があり左にカーブしていたが、先は分からない」。さすがに滝口までは危険で上らなかったが、足場横にも未調査の洞窟があり、中をうかがえた。
全人類で3人目に足を踏み入れた学生は興奮気味。メガネが曇っているのも気にせず、周囲を食い入るように観察する学生の熱気が伝わり、シャッターを押す指に力が入った。
調査後に小野寺さんは「水源を突き止めるのは難しいかもしれないが竜ケ岩洞の資源や可能性を探りたい」と力を込め、「大滝以外にも未探索地の調査を年内に計画している」と話す。
県西部有数の観光地として、地域を盛り上げてきた竜ケ岩洞。地底には、さらなる魅力向上につながる可能性が眠っている。
<竜ケ岩洞(りゅうがしどう)> 約2億5000万年前の石灰岩に形成された総延長約1000メートルの鍾乳洞。石灰石の採石場だった竜ケ石山(りゅうがしやま)を、観光鍾乳洞の初代所長の故戸田貞雄さんや小野寺支配人らが調査探索し、1983年に開業した。約400メートルが一般公開されており、年間で30万人が訪れる。観光施設の所在地は浜松市北区引佐町田畑。
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