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解雇特例特区―あまりに乱暴な提案だ

いくら「特区」だからといって、雇い主の権利の乱用は認められない。政府の産業競争力会議で、解雇や労働時間などの規制を緩和した特区をつくる提案があり、安倍首相が厚生労働省に[記事全文]

暴力指導有罪―再発の温床なくさねば

大阪市立桜宮高校2年の男子生徒が自殺した問題で、生徒に暴力をふるった元顧問教諭に有罪判決が言い渡された。裁判官は「効果的で許される指導方法」と妄信し、暴力的指導を続けて[記事全文]

解雇特例特区―あまりに乱暴な提案だ

 いくら「特区」だからといって、雇い主の権利の乱用は認められない。

 政府の産業競争力会議で、解雇や労働時間などの規制を緩和した特区をつくる提案があり、安倍首相が厚生労働省に検討を指示した。

 特区内にある開業5年以内の事業所や、外国人社員が3割以上いる事業所への適用を想定しているという。

 特に問題なのは、解雇規制の緩和だ。

 現行ルールでも、企業には従業員を解雇する権利がある。ただし労働契約法16条で、その解雇が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は権利の乱用になり無効としている。

 今回の提案は、ここに特例を設け、「特区内で定めるガイドラインに適合する契約に基づいていれば、解雇は有効」と規定するという。

 解雇へのハードルが下がり、トラブルも防げるので、企業が多くの人を雇ったり、高い給料を払ったりできるようになる。そんな主張である。

 雇用契約に、解雇の要件を明確に記すこと自体は、推進すべきことだ。

 だが、実際に解雇が正当かどうかでもめた場合、契約の文言だけでなく、働かせ方の実態をみて判断するしかない。

 社員の成果の測り方ひとつとっても、業務に必要な資源や環境を与えられていたかどうかに左右されるはずだ。

 競争力会議側は、仮に裁判になった場合、契約を優先させるよう求めているが、あまりに乱暴な議論だろう。今回の提案は企業側が一方的にリスクを減らすだけではないか。

 日本で正社員の解雇が難しいといわれるのは、ある仕事がなくなっても、従事していた人をすぐに解雇せず、他にできる仕事がないか探す義務が企業側にあるとされるからだ。

 ただ、それは「辞令一本で、どこででも、なんでも、いつまでも」という無限定な働かせ方と表裏一体の関係にある。

 そこで、仕事の内容を具体的に決め、さらに解雇が有効になる判断基準について労使と司法のコンセンサスをつくろう。最終的には、立法や通達で明確にしよう――。

 政府の規制改革会議の雇用ワーキンググループは今年5月末にこんな提案をした。ただし、それが実現しても権利の乱用は認められないことを確認することも忘れなかった。

 こちらの方がはるかに建設的な提言ではないだろうか。

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暴力指導有罪―再発の温床なくさねば

 大阪市立桜宮高校2年の男子生徒が自殺した問題で、生徒に暴力をふるった元顧問教諭に有罪判決が言い渡された。

 裁判官は「効果的で許される指導方法」と妄信し、暴力的指導を続けてきたと非難した。

 学校での教員の暴力が公判廷で裁かれたのは異例で、判決の意味は重い。暴力による指導効果を信奉する人たちは、自らへの警鐘と受け止めるべきだ。

 大阪市教委は事件後、元顧問の行為は「体罰」ではなく、「暴力」と定義した。ささいな理由で繰り返しており、落ち度を戒めるための「罰」ですらなく、まったく正当化できないとの考えだ。

 文部科学省の全国調査では、昨年度だけで6721人の教員が体罰をし、被害を受けた子は計1万4208人にのぼった。

 学校教育法は体罰を禁止しているが、罰則規定はない。だが、そもそも心身を傷つける暴力は許されない行為で、教育現場ではなおさらのことだ。「体罰」は暴力との基本認識をもっと明確にしてこそ、暴力追放の徹底をはかれるのではないか。

 元顧問は暴力をふるった理由について、「目の前の生徒に成長してもらいたいとの思いがあった」と裁判で語った。最近も、天理大や浜松日体高などで暴力が発覚した。「気合を入れたかった」「うまくなってほしかった」。指導者や先輩の言い分は、元顧問のそれと重なる。

 暴力をふるう側は、受ける側の心身の痛みを忘れがちだ。傷つけてからでは遅すぎる。今回の判決を教訓に、そのことを心に刻む必要がある。

 桜宮事件でもう一つ浮かんだのは、世代を超えた暴力の「連鎖」と、部活のチームが強くなるためにと暴力を「容認」する構図だった。

 元顧問は桜宮高校に赴任した94年から暴力をふるい続けた。元顧問は「自分もたたかれて育った」と振り返っている。一部の教え子は同校の同僚教員になり、黙認した。暴力を目撃した保護者もいたが、指導者として定評があった元顧問を誰一人、本気で止めなかった。

 学校での暴力は過去に何度も問題になってきたが、こうした連鎖、容認が根絶を阻んできた。今なお、「若い世代も耐えてこそ育つ」と思い込んでいる人は少なくないようだ。

 亡くなった生徒の父親は判決後、「教育現場に認識が浸透していない」と無念を吐露した。

 体罰と言われてきたものは、犯罪と隣り合わせである。社会全体で意識を変えていかなければならない。

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