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【芸能・社会】死の淵まで被災地に歌を 双子デュオ「サスケ」タカの死惜しむ2013年9月27日 紙面から
7月24日未明、1人のフォークシンガーが、死んだ。愛媛県出身の双子のデュオ「サスケ」のボーカル・ギター担当タカこと大垣隆正さん。肺がんに侵され、58年の生涯を閉じた。発病から1年余りでの死。同月28、29日に東京都板橋区のときわ会館で営まれた通夜・葬儀には、無名に近いミュージシャンの才能と人柄を惜しんで多くの供花が寄せられ、500人以上の人たちが見送った。昨年7月、入院直前に行われた「励ます会」と同じ東京都内の会場で、29日に催される「しのぶ会」には全国から友人、知人が集まる。 メジャーレーベルからレコードを出したこともあるが、広く世に知られることはなく、30年以上ライブ活動に力を注いできたサスケ。昨年春にがんを告知された後、自主制作した「生きてりゃいいこときっとある〜高田の一本松〜」が、最後のCDになった。「ダスティン・ホフマンになれなかったよ」などで知られる作詞家・藤公之介さんの詞にサスケが曲を付けた、陸前高田の奇跡の一本松を歌った作品。レコーディングをサポートしたミュージシャンのDeep寿によると、すでに骨にまでがんが転移してギターを持つことさえつらい状況の中、タカはワンフレーズ歌っては息絶え絶えになりながら、命を削るような作業だった。 現地を訪れ、一本松の前で歌を披露。タカが亡くなった日、地元のラジオ局は、曲を流して追悼した。歌をきっかけに交流を深めてきた陸前高田市の戸羽太市長は、通夜にかけつけ、「被災地を訪れ、絶望の中にいた私たちを励ましてくださいました」と感謝の弔辞を述べた。 双子の兄弟は1971年、高校生の時、岐阜県で開かれた中津川フォークジャンボリーに出かけ、強烈な個性を放つ三上寛(63)の音楽に衝撃を受け、フォークシンガーを目指した。「爪を研げ」「最終電車」など夢を追う若者の心情をロックのリズムに刻む一方、「からだ元気かな」は「ひらけ!ポンキッキ」の挿入歌になったり、「八幡浜ちゃんぽん物語」は愛媛県八幡浜市の公式ソングとして親しまれるなど、ジャンルにこだわらず人の琴線に触れる歌づくりに励んできた。 30年来のファンの宮澤佳代子さん(54)は、「メジャーじゃなくても、いい歌を歌ってる人はいっぱいいる。サスケは3、4年会ってなくても、まるで昨日会ってたみたいに受け入れてくれた。自分が問題をかかえている時でも、歌を聴いて忘れることができた。自分の青春です」と残念がる。 吉祥寺の老舗ライブハウス「マンダラ2」は、本拠地の1つだった。サスケの魅力について、30年以上の付き合いになる中野直志店長は、こう話した。「ステージの華やかさとか音楽的にすごいことやってるとかじゃなく、彼らの人柄と自分たちをストレートに出した歌がよかったんじゃないかな。自分を励ますような歌を聴いて、僕らも励まされた。プロなんだけど、どこか素人っぽさを残してる。フォーク青年の気持ちをそのまま持ち続けてきたっていうのは、天然記念物みたいなものかもしれない」 うり二つの顔立ちの弟の亡きがらを見て、「自分の生前葬だ」とジョークを飛ばしていたカツは、「サスケとしてまだ当分やらなければいけないことがある」。29日は、区切りの弔い酒になりそうだ。なお、「しのぶ会」の問い合わせは、皿井祐さん(電)080(3700)4711。 (本庄雅之) ◆2人で1人…純粋なんです なぎら健壱サスケを弟分としてかわいがり、自身のライブで黒いアロハを着て追悼した先輩なぎら健壱(61)の話 私も食えない時代に3人でよく旅しました。フォークがかげりを見せた時代に、いっしょにその空間、時間にいたっていうのが思い出として残ってますね。サスケっていうのはカツとタカ2人で1人。で、純粋なんです。自分たちの確固としたものがあるのに、流行に流されちゃう弱さがあった。それと、今どき珍しい、歌が好きなのよ。プロになるとお金のためとか生活のためっていうことが出てくるんだけど、そうじゃなくて、ステージで歌ってることが好きだっていうね。そこが魅力ですね。(タカが亡くなったのは)早いっすね。これからカツがどうサスケを演出していくか。手助けは惜しみませんよ。 <サスケ> 1954(昭和29)年11月27日愛媛県西宇和郡三崎町(現伊方町)生まれの大垣勝正、隆正の双子デュオ。ヤマハライトミュージックコンテスト下関大会に飛び入り出場で優勝。下関第一高校卒業後、上京。キャニオンから、シングル「小さな幸せ」LP「二人三脚」でデビュー。作曲したRIRIの「大阪湾」がヒット。LP「武蔵野フォークジャンボリー」に参加。道後温泉本館建築100周年記念曲「旅のマドンナ」など。2人の人生が、NHK「小さな旅」に取り上げられたこともある。 PR情報
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