週プレNEWS 9月26日(木)18時10分配信
グローバル化による英語力の必要性は、日本でもTOEICの受験者数が増えていることから顕著になっているが、お隣韓国における“英語圧力”は、日本の比ではないらしい。
商社に就職希望の延世大学4年生、ホン・ジョンドゥ君(仮名)は語る。
「韓国では大学入学時にTOEIC(990点が満点)で600点から700点くらい、ソウル大学や延世大学など、トップクラスの大学だと800点から900点ぐらいないと入試をクリアできません。そして、いい大学をいい成績で卒業するだけでは就職は難しい」
そこには日本とは違った就活事情があるようだ。
「韓国には日本のように新卒一括採用という制度はなく、即戦力が求められます。企業に長期インターンで働くとか、海外でボランティア経験を積むとか、そのために休学をするのも常識で、英語はできて当たり前。僕は交換留学の試験をパスするために半年間休学しました。休学中は考試院(コシウォン・学生や休職中の人が国家資格などを取るために使う専用宿舎。ソウル各地にある)と自宅を行き来する毎日です。それ以外のところには一切寄りませんでした。全国の大学生が休学して考試院に通うのですから、外に出たら負けです」(ホン君)
京郷新聞の徐義東東京支局長は、グローバル化の進行が韓国社会を疲弊させていると言う。
「李明博前政権は国民所得2万ドル達成を目標に掲げたが、それを達成するために韓国が北東アジアの経済ハブになる必要があるとして、国内の規制を緩和。その結果、社会人も大学生も日々競争に明け暮れ、国内ではさらなる格差と貧困が広がりました。
特に韓国の若い人の痛みが激しいことを心配しています。その代表が『88万ウォン世代』と呼ばれる、定職を持たず月に平均88万ウォン(約8万円)で暮らす若者たちです。当然、彼らは結婚もできません。
地域で生まれ、地域の学校を出て、地域で結婚して一生を終える。今や、そんな暮らしが韓国では難しくなっています」
TPPのモデルといわれる米韓FTAも、その格差に拍車をかけたひとつの要因だ。
「米韓FTAで貿易は拡大し、大企業の競争力は強くなるかもしれませんが、その一方で地域の多様性や独自性は薄れ、すべての富がソウルに集中する可能性が高いです。そして、そのソウルすら競争が飽和状態になって、若い人の目は海外に向いています。いい大学を出るだけではダメだから、いい就職、いい収入を得るために韓国を脱出して、海外で職場を見つける。そのためにも英語はできて当たり前というのが最近の傾向です」(徐支局長)
近い将来、日本も同じような状況になる可能性があると徐支局長は指摘する。
「今、日本が参加しようとしているTPPも、社会にそうした傾向をもたらすはずです。日本は市場規模が大きく、内需だけでも十分に食ってゆけるのに、なぜ好きこのんでTPPを進めるのか? 『このままでは韓国に後れを取る』という日本人もいるようですが、現実として韓国人自身は疲れているし、疑問も感じているのに……」
グローバル化は、言い換えれば競争相手が世界中に広がること。勝ち組は今以上に勝ち、負け組はより悲惨に……。現在の日本の“格差社会”は、まだまだ序の口かもしれない。
(取材/川喜田 研)
最終更新:9月26日(木)18時30分
「消費税アップ」根拠も使途も全部デタラメ |