稀勢の里(左)が日馬富士を肩透かしで破る=両国国技館で(沢田将人撮影)
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◇秋場所<12日目>
横綱白鵬(28)=宮城野=は大関琴奨菊を肩透かしで転がし、1敗で単独首位をキープした。琴奨菊は5敗目。2敗対決は大関稀勢の里(27)=鳴門=が横綱日馬富士(29)=伊勢ケ浜=を熱戦の末に肩透かしで破って10勝目を挙げた。大関鶴竜は豊響を肩透かしで退けて9勝目をマーク。両関脇は豪栄道が勝ち越したが、妙義龍は7敗目と後がなくなった。新小結の高安は負け越し、新入幕の遠藤は9勝目を挙げた。
座布団が乱舞し、館内が拍手と大歓声に包まれた。「聞こえましたよ。勝ったなという感じ」と稀勢の里。49秒2の熱戦の末、日馬富士を破って威風堂々、花道を引き揚げてくる。付け人に下がりと懸賞を渡したところで「ヨシッ!」と声を出し、喜びを表現。V戦線を左右する2敗同士の一番を制し、白鵬追撃の挑戦権を得た。
立ち合いは優勢。一気に押し込んで相手を腰砕けにさせた。しかし驚異的な粘りで逆襲に遭って一転ピンチに。何とか残し、土俵中央で動きを止めたが、頭を付けて上手を引く日馬富士に対し、半身で上体が浮く。体勢は明らかに不利。だが、ここからが稀勢の里の真価発揮だった。
慌てず、じっくりと勝機をうかがった。「我慢ですね。ただ、それだけでした」。持ち前のパワーを生かし左のおっつけで日馬富士の上体を起こすと絶妙のタイミングで肩透かしが決まった。
「(おっつけは)チャンスがあればと思って。たまたまですね。集中してやった結果だと思う」
この日は朝から程よい緊張感を漂わせていた。雨の中、稽古場から出てくると表情をうかがう報道陣に対し「まあ、パパッと、ね」と自ら質問を促した。話題がプロ野球・楽天の優勝に移っても「(先発は同じ茨城出身で同学年の)美馬? 頑張ってほしいね。応援してますよ、いつも」と余裕の対応をしてみせたほどだった。
これで日馬富士には4連勝。もう苦手意識もない。精神面の成長を問われ「まあ、間違いない。いい経験をさせてもらってます。そういう経験を生かして無駄にしないようにしていかないと」と答え、1差で白鵬を追う終盤戦の展開に「やることをやるだけ。集中して」と語気を強めた。
残り3日。まずは13日目の豪栄道戦に全精力を傾け、14日目に予想される直接対決で雌雄を決するつもりだ。 (竹尾和久)
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