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【モータースポーツ】

<ムッシュ柴田、F1を往く!!>F1マネジャーというお仕事

2013年9月25日 10時30分

 シンガポールGPのパドックで、元世界チャンピオンのミカ・ハッキネンに久しぶりに出くわしました。遠いアジアまで何しに来たのかと訊くと、「仕事だよ、仕事。スポンサーに会いに来たんだ」とのことでした。現役引退後のミカは、かつてのマネジャーであるディディエ・コトンと、しばらく前にマネージメント会社を立ち上げたのです。

 ミカが若い才能を発掘し、ディディエがスポンサーの獲得やチームとの交渉を担当する。この二人が育て上げたドライバーの代表が、今年ウィリアムズからF1デビューしたバルテリ・ボッタスです。

 マシンの不調で目立つ成績は上げられていませんが、1年目からチームメイトのマルドナードをしのぐ速さを見せ、チーム内は言うまでもなく、「さすが、ハッキネンが目をつけただけある」と、F1関係者全般の評価も高い。

 しかし今のF1は、ただでさえ少ないシートをめぐって、才能溢れる若手がしのぎを削っている。それはハッキネンも十分承知で、こうやってスポンサー獲得に労を惜しまず、はるばるシンガポールにも飛んで行くのです。ちょっとビックリしたのは、「シンガポールには、初めて来たの?」という質問への答えでした。

 何ねぼけたこと言ってんだという顔で、「とんでもない。シンガポールでF1が開催される前から、何度も通ってるよ」と言うのです。その口ぶりからすると、東アジアや中東、中南米など、経済が沸騰している地域を、さぞ積極的に訪問していることでしょう。ハッキネンのような頂点に上り詰めた人間でさえ、その実績やネームバリューにあぐらをかかずに、潜在的スポンサー開拓に労を惜しまない。

 そういえばシャルル・ピックのマネージメントをしているオリビエ・パニスと先日会った時も、「中国から、帰って来たばかりなんだ」と、言ってました。GP週末にはパドックで各チーム関係者とコンタクトを重ね、それが終わると世界各地でスポンサー探し。彼らが具体的にどんな活動をしているのか、僕らの目にはほとんど触れません。しかし話を聴けば聴くほど、しんどそう。実に労多くして、報われることの少なそうな職業です。

 今で言うと、フェリペ・マッサのマネジャーが、胃の痛い毎日を送っているのではないでしょうか。フェラーリを今年いっぱいで出ることが決まりましたが、本人は現役続行を強く望んでいる。第一志望はロータスですが、ライコネンにさえ給料を払えなかった金欠チームですから、当然大きなスポンサーの持ち込みを要求しているはず。

 もし万一マッサがシートを失うと、来季はブラジル人ドライバー皆無のシーズンになる可能性が高い。僕の勘違いでなければ、エマーソン・フィッティパルディがF1デビューする前年の1969年以来、45年ぶり(!)の椿事となります。バーニー・エクレストンもその事態を何とか防ぎたいようですが、たとえバーニーといえどもチームに無理やりマッサを押し込むわけにはいかない。しかしブラジル経済もひと頃のような元気さはなく、FIA(国際自動車連盟)会長ジャン・トッドの息子で、敏腕マネジャーと言われているニコラも、かなり苦労しているようです。

 などと他人事のように言ってますが、僕らにしてみれば小林可夢偉選手の来季も、大いに気になるところです。イタリアGPの決勝日にちょこっと顔を見せた時には、僕は直接話せなかったんですが、「あとはスポンサーですね」と言って、傍らのマネジャーの肩をぽんぽんと叩いたそうな。

 一部報道では、ザウバー復帰が取りざたされてるように書かれてます。確かに来季、もし18歳のセルゲイ・シロトキンがこのチームからF1デビューできたら、いっしょに組む先輩として可夢偉選手は適任でしょう。シロトキンが噂通り、ロシアマネーをドッサリ持ってくれば、実力本位で採用されるかもしれない。

 しかし残念ながらF1の現場で、「コバヤシ」の名前は噂レベルでも出ていません。去年まであれだけF1村の人々から愛され、この世界にしっかり居場所を確保していたかに見えた可夢偉選手ですが、今シーズンが始まって1、2ヶ月もすると、ほとんど誰も彼のことを言及しなくなりました。

 次から次へと新しい才能が出てくるF1界では、彼らが忘れっぽくなっても仕方ありません。だからこそ可夢偉選手本人や彼をサポートする人々が、「コバヤシは、ここにいるぞ」と言い続けることが必要不可欠だと思うのですが。

まだ現役バリバリのバトンも、若手ドライバーのマネージメントに乗り出しました。(カメラ=柴田久仁夫)

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