NEWS ポストセブン 9月23日(月)16時5分配信
安倍晋三首相(58才)は五輪招致の最終プレゼンテーションで、汚染水について、「私が安全を保証します。状況は完全にコントロールされています」と世界に宣言した。しかし、福島第一原発の高濃度汚染水漏出問題は日々、その深刻度を増し、16日には上陸した台風18号による大雨を受けて、放射性物質のセシウムの濃度を測らずに汚染水を海に放出したことが明らかになった。世界からも批判の目が向けられつつある。
「原発事故はいつか必ず起きる」と警鐘を鳴らしてきた原子力研究の第一人者、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さん(64才)はこれまで以上に事故収束に向けて全力で取り組まねばならぬはずが、逆に不安が強まったと懸念する。
「安倍さんが“安全”を保証したことで、国にとって都合の悪い情報を公開しなくなる恐れがあります。“今、そこにある危機”を国民が幅広く共有できない事態になることが最も心配です」(小出さん・以下「」内同)
今、何をなすべきなのか。
「核燃料は必ず冷やさねばなりませんが、水をこれ以上注入しても汚染水が増えるだけです。私が今考えているのは、水の代わりに鉛などの融点の低い金属を炉心に入れることです。最初は熱で熔けて塊になりますが、次第に塊が大きくなり、やがて熔けなくなる。そのポイントにさえ達すれば、その後は自然に空冷されるはずです」
なんとも独創的なアイディアだが、記者が「本当にうまくいきますか?」と聞くと、小出さんは「そんなこと、わからないです」と苦笑した。
「私たちは人類が経験したことのない想像を絶する状況の真っただ中にいて、何をどうすべきか、確かなことは誰にもわかりません。なので、世界中から多くの知恵を集めて、どの方法がベストなのか議論しながら前に進んでいくしかないんです」
最終的に、福島第一原発は廃炉をめざすことになる。
「私はチェルノブイリ原発のように、原子炉をコンクリートで埋める“石棺”しか廃炉の方法はないと思います。チェルノブイリでは廃炉のため60〜80万人が作業にあたり、事故から27年経った現在でも1日数千人が働いています。しかもチェルノブイリの原子炉は1つですが、福島は4つ。どのくらいの作業員と年数が必要なのか、まったく見当がつきません」
小出さんが指摘した食への影響だが、原発事故前、日本の農作物の放射能汚染は、1kgあたりわずか0.1ベクレル程度だった。それが今は1kgあたり100ベクレルが規制値となり、市場に流通している。
「事故前の1000倍もの被曝を国が許しているわけで、皆さんが不安になるのは当たり前です。私がこういうことを言うと、風評被害を招くと批判する人もいますが、これは“実害”そのものです」
国の基準値はとてつもなく高くとても容認できない。とくに子どもは限りなく0ベクレルに近いほうが望ましいと、小出さんは言う。
※女性セブン2013年9月26日号
最終更新:9月23日(月)17時46分