ソフィア外語学院学院長ブログ

通信教育で英語を学ぶのは難しい/Z会の話

たまに通信教育を利用して勉強しているという話を聞くことがあります。英語の場合、これがいいかどうか聞かれることがあるのですが、結論から先に言うと、ほとんど意味がないし、かえって有害である場合が多いので、やめた方がいいと指導しています。他の教科の場合はどうかというと、やはりやらない方が王道となるのではないかと思います。実際、通信教育の実態を知ると、あまり受講する価値がないことがわかるでしょう。

私は、学生時代に、通信教育のアルバイトをしていたことがあります。英語の通信教育かというと、そうではなく、国語です。なぜ国語かというと、あらかじめ実態を知っていたので、英語の通信教育の答案を添削しているといろいろストレスになることがあると思ったからです。

しかし、それは甘い考えで、国語を教えていても、英語のことでストレスになりました。というのも、会社の国語科の隣のデスクが英語科だったからです。

「今回の重要なポイントは、「アペア」の用法です。」

・・・等という言葉が聞こえて来たからです。話しているのは、会社の英語科の主任の先生です。いくら何でも、"appear"を"a pair"の様に発音するとはひどすぎます。思わず、横から、"appear"と正しい発音で言ってやりました。「高いお金を払って、こんな人に英語を習っているとは、世も末だ」と思ったものでした。ちなみに、この人たちが指導マニュアルを作っているので、内容はしれたものです。

国語でも状況は似たようなものです。最初、国語なら簡単なので、馬鹿な指導をすることはないと思ったのですが、やはり甘かったです。通信教育の問題用紙には、生徒が感想や質問を書く欄があり、その欄で受講者が古文の勉強方法を聞いてきたので・・・

「古文を読む際には、現代文に訳さずに、古文のまま理解するようにしてください。」

・・・と当たり前の事を書いたのですが、それが国語科の主任の先生に見つかり、「高邁(こうまい)な事を書くな!」とお叱りを受けてしまいました。たぶん「高慢なことを書くな!」というつもりだったのでしょうが、心が根本から腐っているようにしか見えませんでした。

それにしても、主任を始め、数人いる本社の常勤の国語科の先生は、みんな私を怖がっているのがよくわかりました。たぶん偏差値的なレベルの差が恐怖の原因なのでしょう。私の偏差値が70を超えていて、察するところ、主任を含め、常勤の先生方は60以下ぐらいでしょうから、差は大きいです。しかし、向こうは国語の専門家なのだから、もう少し自信を持っていても良さそうなものです。たぶん、そもそもろくに勉強していないので、自信がないのでしょう。

指導の内容なのですが、最初、私はやる気満々だったので、生徒の答案を時間をかけてじっくり分析し、その解答の内容に即した指導をしっかり時間をかけて行いました。すると、1枚の答案を添削するのに3時間以上かかってしまいました。聞けば、慣れてくると早くなると言う話なので、それを期待していたのですが、あまり早くはならず、どうしても2時間はかかってしまいます。

添削が終わった答案を会社に持って行くと、何と激怒されてしまいました。「赤ペンで個別指導」というのが通信添削講座のうたい文句ですから、その通りにやったのですが、個別指導ではなく、指導マニュアルを丸写しにする指導が正しい指導だったのです。ものすごい話なので、下に大きく書いておきます。

通信添削では、指導マニュアルを丸写しにするのが正しい指導なのです。

指導マニュアルに書かれている添削例を赤色のボールペンで書き写すだけ。これでは個別指導ではありませんね。勝手に書いていいのは、「感想・質問欄」だけなのですが、そこでもまともな事を書いたら、前述のように「高邁なことを書くな!」と怒られる始末です。この自称「教師」の人たちは、教育界のゴミとしか考えられません。

しかし、事情を考えてみれば、当然のことです。まず、給料があまりにも安いです。受講生の答案を一枚添削していくらもらえるとかというと、初心者は90円です。ベテランになると120円ぐらいもらえる様です。まともに添削すると2~3時間かかりますから、時給は50円以下になります。昔のこととはいえ、50円では缶ジュースも買えません。今より安いとはいえ、当時でも缶ジュースは100円です。

こんな安い給料でどういう人が働くのでしょうか?たぶん、人前に出て教えることができない恥ずかしがり屋の人ぐらいでしょうか?本社の国語科で人の良さそうな先生に、どういう人がこういう仕事をするのか聞いてみたところ、「物好きだけです。」という返事でした。

安い給料では、優秀な人材は採れません。そうなると、自由に添削させると、とんでもない結果になることは目に見えています。そこでベテランの先生が問題ごとに指導マニュアルを作り、実際に添削指導を行うアルバイトは、それをひたすら赤いボールペンで写すだけと言うことになるのでしょう。「安かろう、悪かろう」と言うことです。英語では、こういう時には、こういう言い方をします。

You will get what you paid for.

思えば、世の中のものは全部そうですね。安い時には何か理由があるものです。高い時にも何か理由があるものです。バランスが取れていない場合は、消えていくことになります。もちろん、消えていくものがあっても、それだけが理由ではないです。しかし、一般的に言って、安い料金のものによって高い成果を上げるのは、無理な話です。

それから、添削指導をしていて気がついた事ですが、いわゆる一流高校の生徒は、ちゃんと答案を書いてくる受講生が多かったですが、それ以外の大半の受講生は、所々しか問題をやっていません。全くお金の無駄遣いです。こういうのも通信添削の限界ですね。

勉強の仕方としては、通信添削の問題を解く前にやることがたくさんあると思います。英語だったら、そもそもちゃんと正しい発音で発音しているかどうかは重要です。英語を聞き取ったり、すらすら読んだりできないのに、何のために問題を解くのでしょうか?国語でも、普段、本を読んでいないのに、本の抜粋を読んで問題を解くというのは、変な話です。どこか頭のねじが抜けているとしか考えられません。

ところで、今回この話を書いたのは、たまたまインターネットでZ会という通信添削の会社の広告を見たからです。ただ、ここに書いた話は、Z会とは必ずしも関係はありません。あくまで自分の経験や一般論を書いています。それに、会社によって添削のアルバイト料は違います。興味のある方は、答案1枚あたりに支払っている金額から逆算すれば、大体の見当がつくかもしれません。私の働いていた会社では、10%ぐらいがベテラン添削者の給料でした。添削のシステムも違いがあるかもしれません。

Z会の名前を出したのは、その広告がなかなかおもしろかったからです。何がおもしろかったかというと、下の写真です。

Z会

引用元: zkai-url.gif


この写真ですが、私も持っています。これです。

students_studying--small.jpg

この写真を一部カットして、縮小したのがZ会の写真です。私が持っている写真の方は、カットされていない原版なので、不正使用を防止するために、今回のアップロードに当たって、私が画像処理ソフトを使ってぼかしを入れました。

ちなみに、この写真によって、私個人とZ会は裏でつながっているなどと思わないでください。Z会の教室の写真に見えるけれども、実はZ会の教室ではないというだけの話です。こういうことは、社会常識の一つです。また、無断使用でなければ、別に不正行為でもありません。

しかし、世の中は、イメージですね。社会常識のない子供が見たら、教室を実際に撮影したものだと思ってしまうでしょう。個人のサイトではなく、会社のサイトですからね。写真などにお金を使うこともできます。たまには子供の頭を冷やすことも必要ですね。


テーマ: 英語教育 - ジャンル: 学校・教育

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