英国:ロンドンで英兵殺害 「ホワイト・ウィドー」の謎 29歳英国人、アフリカで過激派支援 逮捕の男と接点
毎日新聞 2013年06月21日 東京朝刊
【南アフリカ中部ブルームフォンテーンで服部正法】ロンドンで5月に起きた英兵殺害事件で「ホワイト・ウィドー(白い未亡人)」と呼ばれる英国人の女に注目が集まっている。女は南アフリカの偽造旅券でアフリカ各国を渡り歩き、イスラム過激派の資金や戦闘員集めをしているとみられ、殺害事件で逮捕された男とも接点のあった可能性が浮上。各国捜査当局は英国−南ア−東アフリカを結ぶ過激派ネットワークの重要人物として、その行方を追っている。
この女は英南部バッキンガムシャー出身のサマンサ・ルスウェイト容疑者(29)。10代でキリスト教からイスラム教に改宗。ジャマイカ出身の男と結婚したが、夫は2005年7月にロンドンで起きた同時爆破テロ事件の容疑者の一人で、事件の際に死亡した。アルカイダが犯行声明を出した。
ルスウェイト容疑者は事件後、2人の子供とともに姿を消すが、その後、アフリカ東部ケニアに南アの偽造旅券で滞在していたことが判明した。
ケニア警察は昨年、ルスウェイト容疑者がケニアでテロ攻撃を企てたグループに関係していたとして、逮捕状を取った。捜査当局はグループに資金を提供していたとみている。
ケニアでは近年、国際テロ組織アルカイダと連携するソマリアのイスラム過激派アルシャバブが勢力を伸長。11年秋にケニアがソマリアに軍事介入して以降、国内でテロ事件も頻発している。
また、英兵殺害容疑で警察に逮捕されたマイケル・アデボラジョ容疑者(28)は10年、ケニアからソマリアに不法入国を図り逮捕されたことがあるが、アルシャバブへの参加を企てた模様だ。英紙デーリー・テレグラフは、この際にルスウェイト容疑者に近い人物と接触したとみられると報じた。
イスラム過激派に詳しい南ア・フリーステート大のフセイン・ソロモン教授は、独自調査などを総合しルスウェイト容疑者の活動をこうみる。
ケニアでアルシャバブと出会った後、昨年10月ごろまで南アに2年滞在し、ヨハネスブルクを中心に英国の人々と南アのアルシャバブ関係者、パキスタン系戦闘員らを結ぶネットワークを組織。英国で資金を集め、南アで過激派戦闘員のための身分証明書類を入手し、戦闘員の訓練もしていた−−。