米アップルの携帯音楽プレーヤー「ｉＰｏｄ（アイポッド）」で使われている技術を巡り、東京都内でソフトウエア会社を経営する発明家の男性（５６）が特許権を侵害されたとしてアップル日本法人に１００億円の賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁（高野輝久裁判長）は２６日、約３億３６００万円の支払いを命じた。男性側の弁護士によると、アップルによる特許権侵害が認められたのは国内初という。

　争われたのは「クリックホイール」と呼ばれる装置に関する技術。指で円形のタッチパッドをなぞると、曲の選択や音量の調節など複数の操作ができる。

　男性は円形のタッチパッドに触れることでスイッチのオン・オフなどが可能になる技術を開発し、１９９８年に特許出願。２００６年に特許登録された。アイポッドの技術が自身の発明と酷似しているとして抗議したが、アップル側は男性の技術に新規性はないなどとして、０７年に特許権を侵害していないことの確認を求めて提訴。男性は賠償を求めて反訴していた。

　高野裁判長はアップル側の訴えについては却下したが、男性側は賠償額を不服として控訴する方針。アップル側も控訴するとみられる。

　男性側の弁護士によると、クリックホイールは０４年からアイポッドで導入され、現在も一部機種で使用されている。ただ、男性側は訴訟で販売差し止めを求めておらず、アップル側は販売継続が可能。判決が確定すれば、男性とライセンス契約を交わすか、この技術を用いた機種の日本での販売を中止しなければならないという。

　判決について、男性側の弁護士は「特許権侵害が認められたのはうれしいが、賠償額があまりにも低い」と話した。アップル日本法人は「ノーコメント」としている。【川名壮志】