第八回
一筆啓上正体が見えた
今回は悪役のキャラクターがユニーク。
退職間近の窓際同心・山崎格之進(ミスター被害者織本順吉)が、島帰りの銀次(田畑猛雄)を追っていて、配下の下っ引き・仙吉(佐々山洋一)を殺され、下手人を取り逃がす。
いっしょにいた主水は、上司村野(宗方勝巳)から扶持米停止を言い渡され、大ショック。必死に銀次の跡を追う。手配書を張りに来た髪結処で、おこうに食ってかかられる主水。銀次は無実で仙吉を殺したのは、山崎だという。何か悪事を嗅ぎつけられて、仙吉を始末したのか?窓際同心の山崎と主水はウマの合う仲だった。主水は同病相哀れむ仲の山崎を疑いきれない。退職後のことなど、山崎とふと話して和む主水。
ところが、山崎はとんでもない外道同心だった。
パート希望の主婦を言葉巧みに騙して、売春強要するなどしたい放題の悪行を重ねていた。こんな時代に奉行所に泣きつくことも出来ず、食い物にされていく女達。仙吉の女房、おしま(吉行和子)も、山崎に騙されて客を取らされていた。亭主に山崎の正体を告げていれば・・・と悔やむおしま。
山崎同心が主催する風俗営業の共同経営者は、伊勢屋(藤岡重慶)、辰平(田口計)、同心真鍋(西山辰夫)たち。客にSMショーを見せて愉しませるなど、トンデモナイ経営手腕を発揮していた(^^;)。
堪忍袋の緒が切れたおしまが包丁片手に暴れるが、あえなく返り討ち。おこうの店におしまが投げ込んでいた仕置料で、さすがに重い腰を上げる仕置屋一党。今回も手際よく一味を始末。
与力村野の前で、主水に化けの皮をひんむかれた山崎は観念して、切腹するのだった。
雨の中、おしまの履き物をすげてやる市松の美しさには、女性ファンならずとも、ぐっとくるものがあるだろう。今回セリフなど殆どないのであるが、かえってこの位のほうが凄みがひきたつようだ。
印玄は今回、田口計を屋根落としにするが、このお方のトメテタスケテも味のある演技だ。しかしこの役者も女衒系統の役柄が目立つなあ。よほど好きなのだろうか?
織本順吉サンは被害者役がはまるお方だ。最近見たものに限っても、「米将軍 徳川吉宗に挑んだ男」で破産して首吊り、「おしどり右京捕物車」第五回で殺されて橋のたもとで晒し者、「影同心U」第七回で吉原の太夫に入れあげて破滅などなど・・・枚挙に暇がない。ところがたまに悪役などやると、意外性もあってか、作品は凄み倍増の出来になる。まあ身も蓋もないことを言ってしまうと、TV時代劇のゲスト出演って、悪役か被害者のどっちかなのだが・・・
女に客を取らせながら、因果を含める極悪シーンは名演だった。
今回も頭脳プレイでしっかり点数稼ぎをする主水だが、結局村野の判断で事件は闇に葬られる。 『奉行所がまったく機能していない』という描写は、このシリーズの場合、この通り徹底している。