発注元から強いコスト削減要請にさらされたり、増税分を一段のコスト削減で吸収するよう求められるなど、製品の納入価格に転嫁できない恐れがある。体力の弱い企業は価格転嫁ができなければ、収益を圧迫され“消費税倒産”に追い込まれる恐れがある。
日本商工会議所などが昨年実施したアンケートでは中小企業(年間売上高が5000万円以下)の6割超が「価格転嫁は困難」と訴えた。これに対して、消費税増税法案は、価格転嫁対策について「必要な法制上の措置を講じる」などと明記するにとどまり、具体策を欠く。
価格転嫁対策をめぐる政府の検討本部が今年5月にまとめた中間報告では、中小企業などの業界団体が増税分の製品価格への上乗せを取り決める「転嫁カルテル」を公正取引委員会に届け出た場合は、独占禁止法の適用除外として容認する方向で検討するとした。ただ製品の本体価格そのものを取り決める「価格カルテル」は引き続き禁止される方向だ。
日本金型工業会の場合、加盟企業は金型メーカー全体の1割で、「数千あるメーカー全体で転嫁カルテルを結ぶことは難しい」(中里常務理事)と実効性を疑問視している。