福知山線脱線:どんな判決でも闘う 後追い自殺女性の遺族
毎日新聞 2013年09月26日 07時25分(最終更新 09月26日 07時47分)
兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故で、業務上過失致死傷罪で強制起訴されたJR西日本の歴代3社長の判決公判が27日、神戸地裁で開かれる。事故で死亡した男性の後を追って自ら命を絶った荒川由起さん(当時32歳)の母澄子さん(66)と兄直起さん(46)=いずれも大阪市東淀川区=は、複雑な思いで裁判を見つめてきた。思いをつづった書面を裁判所に提出したが、3被告側が証拠採用に同意せず、却下された。来月15日で由起さんが亡くなって7年。無念の思いは深まるばかりだ。
由起さんは脱線事故で亡くなった男性(当時33歳)と13年間2人で暮らしていた。事故から1年半後の06年10月、飛び降り自殺した。部屋には「(男性の)命を奪い 二人の未来を奪い 私からすべてを奪ったJRが憎くて憎くてたまりません」という遺書と、事故直前に男性から受け取っていた婚姻届が残されていた。
澄子さんも直起さんも昨夏始まった裁判には「他の遺族と立場が違うから」と一度も足を運んでいない。意見陳述については参加を希望したが、由起さんが106人の犠牲者に含まれていないとして実現しなかった。それでも昨年末、他の遺族に勧められ、直起さんは思いをつづった。
2人が幸せに暮らしていたこと。飛び降りた直後に駆けつけ、握った手が冷たかったこと。そして3被告に呼びかけた。「あなたがたの起こした事故により、死者、負傷者のみならず、その何倍もの人たちをいかに苦しめているかを知ってください」。そして最後に訴えた。「会社を辞任すれば責任はないのですか? 自分たちの罪を認め、できる償いを逃げずに行うべきではないでしょうか」
検察官役の指定弁護士が書面を証拠請求したが、3被告側の不同意で却下され、朗読されることもなかった。
由起さんの遺書には「JRと戦って下さい」とも書かれていた。判決を前に澄子さんは話した。
「どんな判決が出ても、一生闘っていかなあかん。それが由起の供養になると信じている」【藤顕一郎】