新入幕の遠藤(22)=追手風=が旭天鵬を上手投げで破り、勝ち越しを決めた。横綱白鵬(28)=宮城野=は関脇妙義龍を右小手投げで何とか退け、連敗を免れて1敗で単独首位を守った。10勝目となり、自身の持つ史上最多の連続2桁勝利記録を40場所に伸ばした。横綱日馬富士(29)=伊勢ケ浜=は関脇豪栄道を寄り切り、大関稀勢の里は魁聖を押し出し、ともに2敗をキープした。豊真将が負けたため、白鵬を1差で追うのは2人に減った。十両は鏡桜が1敗で単独トップを守った。
鮮やかに、アピール度満点の上手投げで新入幕勝ち越しを決めた。遠藤は、優勝経験のある17歳年上の旭天鵬をわずか2秒5で料理。右から豪快に投げ飛ばすと、待望のニューヒーロー誕生を喜ぶ館内の興奮はピークに。大歓声を背に、大物感を漂わせながら花道を引き揚げた。
「崩してから攻めようと思っていた。できすぎです。会心の内容でも泥くさくても勝ちは勝ち。旭天鵬関に勝ったこともそうですが、11日目に勝ち越せたことがうれしい。やっぱり幕内での勝ち越しは重みがある」
大事な一番を迎えても動じない。どれだけ周囲が騒ごうが、自分のペースを崩さない。この日は朝稽古の時から「ずっとどうやって取ろうか悩んで出番まで考えていた」と話すが、取り口に迷いなどみじんもない。
「落ち着いているとかいうより、自分はのんきなだけ。家族そろって時間にはルーズだし。いつもギリギリまでのんびりしてますから」。幼いころから、遅刻こそしないが、登校時間は寸前が常だった。相撲の稽古もそう。「余裕を見せているというより、ただ行きたくないだけなんですけどね」と報道陣を笑わせた。
2階の観客席には故郷である石川・穴水町から後援会のメンバー9人が訪れ、「勝ち越しおめでとう」のボードを振って歓声を送った。大中正司穴水町会議員(65)は「最近は朝、おはようのあいさつの前に遠藤の話題になる。郷土の誇り。次は三役。楽しみですね」と声を弾ませた。
同じ学生横綱で、所要4場所で入幕した長岡(のちの朝潮)、武双山(現藤島親方)の14日目を上回る11日目での勝ち越し。北の湖理事長(元横綱)は「これで2桁勝てば三賞候補に挙がってくるだろう」とたたえる。今後はさらに強力な対戦相手が組まれることが予想され、真価が問われる残り4日間になる。 (竹尾和久)