橋下、「堺」は作戦負け!大阪「府市統合」瓦解へ
現職市長の「堺を無くすな!」キャンペーンに、地元出身のサッカー界のドン、川淵三郎も登場。百人力か。
2013年10月号 POLITICS
押し込まれている維新は、橋下が前面に出て堺市内を駆け巡る一方、国会議員全員に堺入りを要請、地方議員総動員のローラー作戦で巻き返しを図っている。公明党の支持母体・創価学会にも松井一郎幹事長(大阪府知事)が働き掛けたが、婦人部を中心に橋下への反発が強く、自主投票の壁を破れなかった。抵抗する小国「堺」を攻め落とせるかは結局、橋下人気が今も通用するかにかかっている。
まやかしの「統合効果」
実は、橋下のホンネは堺市長選どころではない。大阪都構想の本丸「府市統合」がピンチに陥っているからだ。
大阪都構想は、現在、大阪府と大阪市の間で「府市統合」の協議が進んでいる。維新自らが11年の知事・市長ダブル選挙の前に「15年4月までに大阪都移行」と大見得を切ったため、もう時間がない。堺市に構っている余裕はないのだ。
8月初め、漸く具体案が出た。大阪市24区を5または7の特別区に再編し、大阪市の「仕事、 人、カネ」を大阪都と特別区に振り分けるシミュレーション。橋下・松井主導の「制度設計」案だ。ところが、この案に自民党議員らから「まやかし」「粉飾」と厳しい声が飛んでいる。
松井が知事就任当時「(年額)4千億円」と豪語した統合効果は4分の1にも満たない976億円と大きくスケールダウン。おまけにその数字は、統合とは無関係でしかも難航している地下鉄民営化など市の行革の数字が大半だ。「数字は何とでもなる。見せ方だ。もっと乗せられないか」という橋下の事務方への指示が暴露されている。そこまでしても、この数字にしかならないとすれば「統合効果」そのものが疑われる。
プラスが足りなかったためか、コストも無理やりに抑えられている。特別区の庁舎を作らず民間ビルを借りたり、業務の増大に比して人件費を大幅に低く見積もったり……現実性に乏しい部分が次々に現れる。大阪市の負債約3兆円を大阪都が引き受けるのは仕方がないとしても、財政再建団体に転落する。どうにも解決の見通しが立たないテーマが満載だ。おまけに時間もない。特別区に中核市並みの強い権限を与える約束を果たすためには、国会で125もの法改正を通さなければならない。住民基本台帳を変更するシステム改修にも1~2年はかかる。15年4月移行の現実性は既に薄れている。だが、橋下はこの案をベースに府市の協議を乗り切り、来年秋の大阪市民による「住民投票」に持ち込む姿勢を変えていない。いったいどう始末をつけるつもりなのか。
仮に「堺」で逆転勝利を収めても、本丸の「府市統合」が頓挫すれば「大阪都構想」は終わりだ。地雷はいっぱい。秘策があるのか、投げ出すのか――。「堺」の先こそ本当の地獄かもしれない。(敬称略)
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