視覚障害者バイアスロン競技のための「電子音響照準装置」を開発 中外製作所常務取締役工場長 関川 孝雄(せきかわ・たかお)さん
標的の明るさを周波数に変換
私たちにはなじみの薄い競技ですが、ヨーロッパでは20年も前から盛んだという「障害者バイアスロン競技」が、来年、ヨーロッパ以外では初めて、長野パラリンピックで行われます。クロスカントリースキーの合間に、選手がエアライフルで10メートル先の的を狙うという競技です。関川孝雄さんは、視覚障害を持つ人が銃を撃つときに必要な、電子音響照準装置を開発しました。この装置は、白い標的の中心ほど反射光が増す原理を利用し、その明るさを周波数に変換し、競技者に知らせるというもの。「つまり、いちばん周波数が高くなったところを狙って撃つと、真ん中に当たります。中心をずれると、周波数が低くなっていくという仕組みです」
真夜中まで開発にのめり込む
電子機器関連メーカーに勤める技術屋の関川さんは、実はライフル射撃の国体チームの監督というもうひとつの顔を持っています。リレハンメル五輪へ、ライフル射撃協会の会員が視察に出かけた縁で、「銃の仕組みも知っていて、技術屋である関川さんにぜひお願いしたい」と依頼をされたのが3年前。射撃協会の人の説明と、視覚障害を持つ選手が射撃をしている写真を見ただけで、制作に取りかかり始めました。「社内で銃を扱えるのは私だけです。だから、射場で試し撃ちをしても、自分で質問して自分で答えを探る。もうのめり込んでしまって、気がついたら真夜中なんてことも。ついに、ライフル協会の仲間を呼んで来て、手伝ってもらうことにしました」
一般の視覚障害者にも楽しんでもらいたい
そして、試作品3号を経てついに完成。専門家からも「従来の欧州製よりもずっと正確」との評価を受けました。「いちばん苦労した点は?」と尋ねると、「私の固定観念で、目が不自由だから正確に、と思いすぎてしまったのですが、それでは競技として面白くない。ど真ん中だけでなく、真ん中に向けてだんだんと音が大きくなるように、幅をつけてくれと言われました。障害を持つ人の感覚が分からず、試行錯誤の連続でした」。「初めは、視覚障害を持つ人が銃を撃つとは考えもしなかった」と言う関川さんですが、今では、健常者がスポーツを楽しむように、障害を持つ人にもその権利がある、と自然に思うようになったと言います。「パラリンピックに出場するのは選ばれた人たち。一般の視覚障害を持つ人たちにも射撃を楽しんでもらいたい」。今度は、この技術を応用し、だれもが扱えるエアライフルに装着できる装置を開発する予定、と夢は広がります。
長野市パラリンピック支援団体「パラボラの会」 池田純さん
来年開催の長野オリンピックは2月22日に終了しますが、3月5〜14日までの10日間、もう一つのオリンピック「パラリンピック」が始まります。池田さんは現在長野県身体障害者リハビリテーションセンターでケースワーカーをしており、2年前からパラリンピック支援団体「パラボラの会」のメンバーとしても活躍、多忙な毎日を送っています。
「パラリンピックではアルペンスキー、クロスカントリースキー、バイアスロン、アイスレッジスピードスケート、アイスレッジホッケーの5競技が行われます。どういう身体障害を持った人が参加するのか、また彼らがいかに鍛え抜いて競技に臨んでいるかを、多くの人に知ってもらいたいですね。例えば一本足のアルペンスキー。万一転んで怪我でもしたら両足が不自由になる可能性だってあるのに、果敢にチャレンジするんです。オリンピックのようにスポンサーがついているわけでもないのにそこまでやるのはスポーツを愛すればこそ。お涙ちょうだいの安っぽいドラマとはわけが違います」
池田さんの目下の気がかりは、パラリンピックを観戦したいと長野を訪れた身体障害者の方たちに、いかに快適に過ごしてもらえるかということ。 「交通、宿泊、市内の移動、トイレなど、問題点が全くないとは言えません。でも、長野市は比較的施設が充実していて、東京などから比べればずっと歩きやすい町だと思います。私たちパラボラの会に事前に連絡していただければ、駅までお迎えして各競技場まで案内もいたします。ぜひ応援に来てください」
千曲川の水辺の自然を称え、切り絵に描く??切り絵作家 柳沢京子さん柳沢京子さんは、長野市を活動の拠点に信州の自然を描き続ける切り絵作家です。以前、朝日新聞木曜版「マリオン」のフロントページに、自作の切り絵と詩を連載していたといえばお分かりになる方もいることでしょう。切り絵の、のびのびとした曲線が、郷愁いっぱいの長野の風景を描き出し、現代人が忘れてしまいがちな自然の豊かさを思い出させてくれます。幼いころ時間も忘れて野原で遊んだあの懐かしいひとときが、一枚一枚の切り絵から立ち上ってくるようです。 ●千曲川ハイウエイミュージアム TEL:026-247-6600 |
「夕焼け小焼け」の作曲家・草川信ゆかりの鐘
幼いころだれもが口ずさんだ童謡のひとつ「夕焼け小焼け」。この童謡の作曲家として知られている草川信(くさかわしん)は長野県の生まれです。「夕焼け小焼け」は、彼が幼いころ家で聞いた山寺の鐘をイメージしてつくったといいます。その山寺の鐘が往生寺阿弥陀堂の鐘と言われることから、この鐘を「夕焼けの鐘」と呼ぶようになりました。
●往生寺 長野駅から徒歩20分 TEL:026-232-4349