見た目もおいしい「えん下食」競う9月26日 4時59分
高齢化などで食べ物をかんだり、飲みこんだりする機能が低下した人のための「えん下食」について全国の施設の栄養士などが地域の食材を使い、もっと味や見た目で料理を楽しんでもらおうと工夫を凝らしたメニューの出来栄えを競う大会が東京で開かれました。
この大会には全国各地の病院や施設などでお年寄りに食事を提供している栄養士など80チームが参加し、このうち8チームが決勝に進出しました。
地域の食材を使うのがルールでこのうち富山県の特別養護老人ホームは特産のほたるいかをペースト状にしたうえでゼリーと混ぜて固め、見た目も味も本物そっくりの一品を作ったほか、お年寄りでも飲み込みやすいよう柔らかく仕上げたますずしを作りました。
このほか函館名産のさけやえびなどをすり身とあえて滑らかにした「海鮮丼」や近江牛と赤こんにゃくを使った「すき焼き」など栄養や見た目にこだわった力作が出品されていました。
えん下食は、かつては安全性を優先するあまり、味や見た目は二の次になっていましたが、最近は高齢化でニーズが高まり、もっと食事を楽しめるえん下食が作られるようになっています。
参加した栄養士は「地元の食材を使うことで、お年寄りとの会話が広がります。安全なだけでなく、食の楽しみを感じられるよう工夫していきたい」と話していました。
富山県チームの料理は本物そっくり
富山県の特別養護老人ホームが出品したメニューはいずれも特産の「ほたるいか」の酢みそあえと「ますずし」、お祝いの時に食べる「たいのかまぼこ」の3品です。
このうちほたるいかの酢みそあえは、まず、ゆでたほたるいかをだし汁と一緒にミキサーにかけ、ゼリーの素を混ぜます。
そのうえで本物のほたるいかを使ってとった型に流し込んで固めると本物のほたるいかそっくりに仕上がります。
ますずしは笹の上にゼラチンを入れたおかゆを敷き、ゼリー状にしたますを入れて舌の力でつぶせる程度の押し寿司にします。
仕上げには柔らかくしたはんぺんで細かな魚の筋も入れて本物に近づけました。
この施設では利用者の半分近くがえん下食を食べているということで管理栄養士の松長由美子さんは「地元の食材を使うことでお年寄りとの会話が広がります。安全なだけでなく食の楽しみを感じられるようこれからも工夫していきたい」と話していました。
「えん下食」とは
「えん下食」は高齢化や病気で食べ物をかんだり飲み込んだりする機能が低下した人のための料理です。
以前は「きざみ食」といって食材を単に細かく刻む方法が主流でしたが、飲み込む機能が衰えた人の場合、誤って気道に入れてしまう危険があることがわかりました。
このため、とろみを加えたりペースト状にしたりする調理法が使われるようになりましたが、これでは食材の形が分からなくなってしまいます。
高齢化が進み、「もっとおいしく食事をしたい」というニーズが高まっているなかで病院や施設でさまざまな工夫が行われここ数年、「えん下食」は大きく進化しているということです。
えん下食に詳しい管理栄養士の金谷節子さんは「重要なのは安全に食べられる上に食べて幸せだと思えることです。これからもどんどん進化していくことを期待したい」と話しています。
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