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2011-05-29 太陽光発電は「積分値」ではなく「微分値」で見ると有益性が見えてく

[]太陽光発電は「積分値」ではなく「微分値」で見ると有益性が見えてくる 18:19



 菅直人首相は25日午後(日本時間26日未明)に経済開発協力機構(OECD)で行った演説で、「家屋への太陽光パネル設置1000万戸」という具体的な目標を掲げました。

 例によって根回しもなく唐突に発表したようですが、その内容について、あえて肯定的に批評したいと思います。

 ・・・

 現在の家庭用太陽光発電システムの発電力は3kw(キロワット)〜5kwという能力ですので、例えば平均4kwだとして、設置1000万戸ならば4000万kwの発電能力になります。

 1時間に4kwh(キロワット時)の電力を作れる太陽光発電ですが、ご存知の通り太陽光発電は夜間や天候の悪いときには稼働できませんので1年は365日*24時間=8760時間なわけですが、実際には稼働率が12%程度ですので、

 4kwh × 8760時間 × 0.12 = 4204.8kwh

 1基当たり年間発電能力が4204.8kwhですので1000万基として420.48億kwhとなります。

 電気事業連合会によれば日本の1年間の総消費電力はここ数年では1兆kwh前後で推移しています。

 f:id:kibashiri:20110529155714g:image

 ですので、菅首相が掲げた「家屋への太陽光パネル設置1000万戸」という具体的な目標ですが、これが達成できたとしても総電力量の約4%ぐらいしか補えないことになります。

 「脱原発」反対の立場の評論家はこれらの数字を踏まえて、太陽光発電のkw当たりの発電コストの高さなどからこの目標の達成には助成金や電力買い取りなどの政府補助を年間何兆円も続けなければならないと、結果として国民負担になると、批判を強めています。

 年間消費電力という電力の「積分値」で太陽光発電を語れば、その稼働率からいって経済性に分が悪いのは当然だとして、このような指標も重要ですが、太陽光発電の優れた特性は「積分値」ではなく「微分値」にあることを、これらの評論家は意図的に無視しているようです。

 確かに年間消費電力も重要な指標ですが、日本の発電所の総電力供給力は過去において年間消費電力を十分に満たしてきましたし余裕もありました、震災のあった本年でさえまずもって電力供給は可能でしょう。

 日本の発電所の総電力供給力は、年間消費電力ではなく、1年のうち最大の電気が消費される瞬間、すなわちピーク電力に備えて発電能力を高めてきたからです。

 電力は備蓄がききません、したがって一年の中で最大のピーク電力時に対応して各発電所の発電能力を備える必要があるわけです。

 つまり、日本の発電所の総発電能力は、年間消費電力という電力の「積分値」ではなく、ピーク時その瞬間の発電能力いわば電力の「微分値」、これに備えてきたわけです。

f:id:kibashiri:20110529160333g:image

http://www.fepc.or.jp/present/jigyou/japan/sw_index_06/index.html

 ご覧いただければ一目瞭然ですが、日本の場合過去電力ピークは7月、8月の夏場に集中しております。

 過去最大のピークを記録した2001年度でみますと、7月に1日当たり182百万kwを記録していますが、同年1月には121百万kwとピーク時の2/3程度に留まっています。

 1月を基準にすれば実に日本全体で60百万kw以上の余剰発電能力を有しているわけです。

 7月、8月のピーク時ですが、時間帯では午後15時前後に最大となります。

f:id:kibashiri:20110529155746g:image

http://www.fepc.or.jp/present/jigyou/japan/sw_index_05/index.html

 この表が示している過去の年間ピーク電力記録日は、すべて7月から8月に掛けて列島全体が猛暑日になった平日の午後15時に集中しています。

 家庭やオフィスなどでエアコン稼働などが集中したためと推測されています。

 ここに太陽光発電の普及が有れば、このピーク電力を抑制可能になり、結果的に日本の発電コスト総体に対してピーク電力を下げることによる供給電力能力そのものの抑制効果が期待できます。

 夏の列島全体が猛暑日になる日、これこそ太陽光発電もその能力をピークに押し上げて稼働が可能だからです。

 菅首相の構想とおり、1000万戸に太陽光発電を普及させたとして平均発電電力が4kwとした場合、4000万kwhの発電がピークの瞬間に太陽光発電から供給可能です。

 この数値は、過去最大のピークを記録した2001年7月14日午後3時の182百万kwにあてはめても、その21.98%を太陽光発電が供給可能であることを示しています。

 このように太陽光発電のメリットは年間消費電力という「積分値」では4%程度ですが、ピーク時の「微分値」すなわち瞬間値に約22%とその効力があらわれるのあります。

 ・・・

 コスト面の問題は確かにありますが、そのメリットも見逃すことなく総合的に議論する問題だと考えます。

 今日現在、日本の原子力発電はその供給能力を1/3に落としています。

2011-05-16 徹底検証:日本の原発稼働状況と予測

http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20110516/1305511953

 5月10日現在で、稼働20基、停止34基、出力ベースでは稼働1883.6万kw、停止3012.4万kw、稼働率38.47%にまで下げておりました。

 その後さらに政府の要請を受け中部電力浜岡4号機と5号機が停止になりましたので、現在では稼働18基、停止36基、出力ベースでは稼働1631.9万kw、停止3264.1.4万kw、稼働率33.33%にまで落ちていることになります。

 つまり原発総出力の1/3になっているのが現状であります。

 それでも現在の所、電力は不足していません。

 日本の電力需要のピークである夏場に備えていますから、発電能力に余力があるからです。

 ここに東大地震研が作成した過去に世界で地震の震源になった地点の分布図があります。

f:id:kibashiri:20110529160232j:image

http://item.rakuten.co.jp/tcgmap/10000007/

 ほとんどのプレート地震がプレート境界地域で群生していることが見て取れます。

 環太平洋火山帯に属する日本列島付近を見て下さい。

 赤いプロットが集中していて日本列島の輪郭すら見ることができません、震源で覆われているのです。

 原発大国のフランスでは地震はありません、100余りの原発を有する米国でも地震の発生する太平洋側には原発は一機もありません。

 地震発生地帯の真上に54基もの原発を林立させている国など日本以外にはないのです。

 今回の原発事故で、日本の原子力発電は結果的に極めて高く付くことが判明しました。

 この機会にこそエネルギー政策を根本的に転換する好機としなければなりません。



(木走まさみず)

けせらせらけせらせら 2011/05/29 18:43 太陽光発電のネガティブキャンペーンをしてる人たちってさ、二言目には「太陽光発電の占める発電力なんて『原発に比べたら』雀の涙ですよ」というけれど、
そもそも土俵が違うのをわざわざ引っ張り出してる時点で利権維持に必死としか見えない。

それはともかく、政府挙げて「15%節電」だが、そもそも各家庭に太陽光発電があったらピーク時の15%節電どころか30%の節電になるっちゅーの。
本来家庭で使う電力が減るという部分を意図的に隠して「売電は案外安くしか買われませんよ」と誤魔化してるけどね。総消費電力の削減という視点で見たら太陽光発電を
ま、1000万世代は大法螺にしても、10万世帯に据え付けるだけでも、真夏の昼間のピーク発電は相当抑えられるはずですわな。

もう一度言うが、各家庭に安価で太陽光発電パネルを推進するのはエネルギー行政の最優先事業ちゃうんかいと言いたい。

merlinmerlin 2011/05/29 22:58 太陽光発電は砂漠地帯の方が効率良いと思いますので、他の発電を優先した方がベターと思いますが、それはさて置くとしても、インセンティブ一戸当たり50万円とすると1000万戸で5兆円、10年計画なら年5000億ですから出来ないことではありません。高校無償化を止めて太陽光発電の援助に振り向ければ財源もOK。
但し、国民任せというのが、いかにも民主党。まずは全国の官庁学校の屋上に太陽電池パネルの設置を義務付けて欲しいものです。

kamokamo 2011/05/29 23:54  まあ、20%なら別にどうってこと無いな。努力目標としてあげておいたって別に困らない。
 で、問題は、後の80%をなんで賄うかだ。原子力は駄目だね。火力は?まあ。石炭のコンバインドサイクルは生きのこれるだろう。天然ガス。これが問題だ。ガスタービンと組み合わせる案もあるが、やはり、ここは一番、燃料電池に期待したいね。相変わらずだが。
 他でも書いたが、既に燃料インフラとしてのガスラインは構築されている。地方の、LPGインフラも安定的に運用されている。このガスを、発電に使って、個別発電をする。家庭内はオール電化でいこう。給湯と冷房は、燃料電池の廃熱で賄う。
 そうすると、実は、今現に使っている燃料ガスの使用量をそれほど増やさなくても、置き換えられそうだ。つまり、一般家庭では、現在使っているガス使用量をそれほど増やさなくても、イヤ、もう少し言い方を変えると。光熱費の増加無しに、或いは、もっと言ってしまえば、光熱費を減少させるシステムを構築できてしまいそうだ。勿論、原発も、電力会社も無しで。

 具体的に構想しましょう。
 家庭用は、3kw、工場事業場用には、それぞれの消費電力に見合った大きさの燃料電池、地域の過不足を調整するために、それぞの規模に応じた自治体運営の、燃料電池発電所。規模は、企業用では、それぞれの企業の実態に応じて、数百から、数千。自治体では、数万からまあ、10万kw以内くらい。これを、既設の送電線で連携する。つまり、平均的消費電力をゼロにする規模を想定し、系統に連系
することで、急激な電力の過不足を吸収する。こうすることで系統は安定し、自立的に制御系が、動いてゆく。
 制御の、ポイントは、周波数。周波数が下がったら、全ての発電所の出力を増加させ出力を上げる。下がったら逆。電圧は、実はもっと簡単で、上がったら、発電機の位相を遅らせる。電圧が下がったら進めればいい。系統運用も簡単で、安定性も高く、極めて高品質の電力網を完成できる

kamokamo 2011/05/29 23:54  まあ、20%なら別にどうってこと無いな。努力目標としてあげておいたって別に困らない。
 で、問題は、後の80%をなんで賄うかだ。原子力は駄目だね。火力は?まあ。石炭のコンバインドサイクルは生きのこれるだろう。天然ガス。これが問題だ。ガスタービンと組み合わせる案もあるが、やはり、ここは一番、燃料電池に期待したいね。相変わらずだが。
 他でも書いたが、既に燃料インフラとしてのガスラインは構築されている。地方の、LPGインフラも安定的に運用されている。このガスを、発電に使って、個別発電をする。家庭内はオール電化でいこう。給湯と冷房は、燃料電池の廃熱で賄う。
 そうすると、実は、今現に使っている燃料ガスの使用量をそれほど増やさなくても、置き換えられそうだ。つまり、一般家庭では、現在使っているガス使用量をそれほど増やさなくても、イヤ、もう少し言い方を変えると。光熱費の増加無しに、或いは、もっと言ってしまえば、光熱費を減少させるシステムを構築できてしまいそうだ。勿論、原発も、電力会社も無しで。

 具体的に構想しましょう。
 家庭用は、3kw、工場事業場用には、それぞれの消費電力に見合った大きさの燃料電池、地域の過不足を調整するために、それぞの規模に応じた自治体運営の、燃料電池発電所。規模は、企業用では、それぞれの企業の実態に応じて、数百から、数千。自治体では、数万からまあ、10万kw以内くらい。これを、既設の送電線で連携する。つまり、平均的消費電力をゼロにする規模を想定し、系統に連系
することで、急激な電力の過不足を吸収する。こうすることで系統は安定し、自立的に制御系が、動いてゆく。
 制御の、ポイントは、周波数。周波数が下がったら、全ての発電所の出力を増加させ出力を上げる。下がったら逆。電圧は、実はもっと簡単で、上がったら、発電機の位相を遅らせる。電圧が下がったら進めればいい。系統運用も簡単で、安定性も高く、極めて高品質の電力網を完成できる

hap2001hap2001 2011/05/30 00:40 わかりやすいですね。黙ってますけど、太陽光発電が夏場のピーク電力を引き下げる効果を電力会社は知っているはずです。自社の遊休地を使ってメガソーラーを建設しているのがその証拠。土地購入の負担がなければ、経済的に見合うのでしょう。
 孫さんや菅さんを批判する人はなぜ、電力会社のメガソーラーを批判しないのでしょうかね。経済的に見合わないことを独占企業の電力会社がやることは、電気料金アップという形で利用者に「課税」しているようなものなんですが。

通りすがり通りすがり 2011/05/30 10:57 太陽光発電の微分値はパネルの設置面積に比例すると考えて
微分的な考え方の一番の問題点は、太陽光パネルの設置面積が増えるとピーク時に大量の発電をし送電網がショートしてしまう、ということ。一番必要なときに送電網のショートにより大停電になってしまう。

家庭用の売電量をコントロールするか、蓄電池経由か。どちらも設置者の負担となって帰ってきます。最初と話が違うわってね

chengguangchengguang 2011/05/30 14:31 太陽電池の出力と云うのは、ピーク時の出力です。太陽光は、シリコン太陽電池パネル1平方メートル当り1kWのパワーがありますが、これは、一番条件の良い場所、良い時刻でこの値、と云うことです。一日3時間弱で、年間で1000時間の計算になります。一般家庭の消費電力量は、一年間で平均4000kWhですので、年間1000時間から逆算して、一家庭当り4kWと云う出力数値が、メーカーのカタログに出ています。
そこで、この4kW分の太陽電池パネル(発電効率は15パーセント程度ですので、4kWのパネルは約30平メートル弱)を屋根にでも設置すれば、電力会社から配電される電気を使用する必要が無くなり、電力会社へ支払う電気料金が丸々浮くことになります。
4kWのパネルを設置している家庭では、上記の状態になっているでしょうか。
ところで、この種のエネルギーが普及した暁には、既存の電力会社は国営になると言うことでしょうか。民間なら、設備投資が嵩む上、ピーク時での電力を用意し、しかも総消費電力量が少ないと言うことになれば、当然電気料金を上げていないと維持できないことになります。

冷静な意見冷静な意見 2011/05/31 11:36 『菅首相の太陽光目標「聞いていない」 海江田経産相しばし沈黙
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110528/plc11052800530003-n1.htm

漫才ですよ、漫才。
国会、国民の合意を得ずして、その上閣僚も知らず、好き放題目標をぶち上げるクソミソ総理。
なんで太陽光だけ?他の自然再生エネルギーはいらんのか??
まさに鳩山のCO2削減の再現。
放射能よりも、このクソミソ党が政府というのが恐すぎる。

のりのり 2011/05/31 18:14 太陽光発電を無条件で信奉する人にも、系統安定化コスト等の諸問題について良く考えていただきたいです。
無条件で、ボンボン増やしていけるものでは無いのです。

夢のエネルギーであるかのように喧伝されている点。
隠されたコストが存在する点。

原発と太陽光発電は構造が似ています。

第4回会合 配布資料4
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/downloadfiles/g100324a06j.pdf

chrdchrd 2011/06/02 00:01 ブログに、一搬人が専門家の真似事で説き語る風潮に加わるのは
どうなのでしょう。
専門家の説と資料を紹介する体裁でいいのではないでしょうか。