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異形の師と外道の怨敵
開かれた幕
俺がスラの下で学んだ事はこの武器と、それを使った戦い方だ。
この武器、セフィロトには4つの段階があるらしい。
活動、形成、創造、流出。
武器セフィロトの位階とその所有者の魂の質は強く関連しているらしい。
位階が流出に近づくほど魂は純化、神に相応しいモノになるらしい。
魂の質を高める方法は2つ。
一つは他者の魂を喰らい自らの物とする事。
要するに、他人を殺した数だけ強くなるらしい。
そしてもう一つは自身を見つめ、『己』という個を深化させる事。
他人を殺さないで済むが、この方法では流出に至るのは難しいという。

ともかく、俺はスラとの修練で自身の魂を形成の段階まで高める事ができていた。
巨大化した刃を頼もしく思いながら俺は強く踏み出した。
駆け寄ってくるレイピアの少女を袈裟懸けに斬り捨てる。
足を引きずりながらクレイモアを構えた少女に対しては、あえて彼女の一撃を引き出す。
片足が使えない事で先ほどより威力が低い。
アゾットで受け止めそのまま押し返す。
バランスを崩した少女の胴を横薙ぎにして、イザークとの距離を詰める。
「おっと!」
跳躍して俺と距離を取ろうするイザークだが、俺に奴を逃がす気は無い。
「ハァ!」
奴との距離は遠いが構わずにアゾットを振り下ろした。
「ハハ。これはなかなか。参りましたね…」
イザークは自身の身体に起こった事象をそう評した。
血が吹き出る。
逆袈裟に斬られたイザークは苛つく笑いを浮かべながら倒れた。
血溜まりに沈むソレを俺は何の感慨も無く見下ろし、先を急いだ。


* * *

(斬撃を飛ばす、か)
混濁する意識のなかでイザークは自分を殺した少年の事を考えた。
(面白い攻撃だ。しかし…このままでは死んでしまうな…)
急速に体が冷えるのが自覚できる。
背中が濡れている不快感は私の流したモノ。
失われていく生命に触れながら、イザークは初めて『その思考』をした。
「私の幕は…まだ引く訳にはいき…ません」
力無く持ち上がった右手はイザークのセフィロト、『グランギニョル』が握られている。
「さぁ…第2幕を奏でましょう。物語はまだまだ序章なのですよ」

彼の力無い哄笑がアキラの耳に届く事は無い。
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