【佐藤雄二】愛知県一宮市の市立中学校在学中に同級生からいじめられ、学校が適切な対応をしなかったため精神的苦痛を被ったとして、会社員の女性(23)が2007年、市に約610万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、名古屋地裁一宮支部であった。倉田慎也裁判長は、同級生の行為は「意図的に行われたもの」として、いじめの存在を認定。そのうえで損害賠償請求については棄却した。
倉田裁判長は、女性は中学1年当時に継続的にいじめに遭っていたとし、当時の担任教諭は「加害生徒の弁解を安易に受け入れ、いじめが存在しないと判断。以後のいじめの申告を封じ込め、いじめを継続させた」として、学校を管理する市側に安全配慮義務違反があったとした。
判決によると、女性は中学1年だった02年10月から、同級生から「うざい、きもい」などと暴言を吐かれ、無視されたり嫌がらせを受けたりした。両親は学校に調査を訴えたが、担任の教諭らは女性本人から聞き取りをしなかった。
倉田裁判長は、当時の担任教諭に対し、女性の母親から、いじめについて具体的に書かれたメモを渡されたことなどから、「いじめの可能性が強いことを知り得た」と指摘し、適切な処置をとらなかった市側が損害賠償義務を負うと結論づけた。
慰謝料などの損害額については、約140万円としたが、同級生を訴えた別の裁判で既に222万円の和解金を受けたことから「(和解金は)精神的損害を補填(ほてん)する性質を持つ」として損害賠償請求については退けた。