時流・底流:情報公開請求の却下 乱用禁止条例は権利制約
毎日新聞 2013年09月23日 東京朝刊
全国市民オンブズマン連絡会議の調査によると、今年4月現在、大量請求などを権利の乱用と判断した場合に、請求を拒否または却下できるとする条例を持つ県、市区は全国に16。10年の調査から5増えた。この規定を適用したケースは今のところ、横浜市の1件だけという。
東京都渋谷区は、現在開会中の定例区議会に同様の規定を盛り込む情報公開条例改正案を提出している。ただ、同区の場合は、特定の区議が区政追及のために頻繁に情報公開請求をしてきたことが、大きな要因となっている。当事者の堀切稔仁(ねんじん)区議(無所属)は「予算が適正に使われているかどうかを調査しようと思ったら、(開示文書が)何千枚になることもある」と区を批判する。
■乱用禁止規定に警戒
「わざわざ条文で定めるということは、本来の権利乱用にあたらない場合までも『乱用』とみなして請求を却下する可能性を残す」と、全国市民オンブズマン連絡会議の調査報告書は指摘する。「官官接待」など、違法な支出や税金の無駄遣いは、大量請求をしないと解明できないことが多く、同会議は乱用禁止規定が広がることに警戒を強めている。
大阪市の条例には、こうした規定はない。同市は今年に入り、冒頭の女性の請求について民法が規定する「権利の乱用」に当たると判断し、一部を却下した。
「見張り番」の松浦さんは「乱用禁止を条例に盛り込むのは、市民の権利を制約することにつながるのでよくない。条例の運用を工夫して、歯止めをかけるしかないと思う」と話している。【日下部聡】
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◇「権利の乱用」を理由にした情報公開請求の拒否・却下を条例で認めている自治体
北海道岩見沢市、同富良野市、東京都中野区、同荒川区、同西東京市、横浜市、富山県、富山市、愛知県一宮市、同豊田市、大阪府箕面市、奈良市、徳島県阿南市、福岡県春日市、佐賀県唐津市、鹿児島県薩摩川内市
※今年4月現在。町村除く。全国市民オンブズマン連絡会議調べ