15日に告示された堺市長選は、「大阪都構想」に反対する現職市長と、推進する大阪維新の会の新顔候補の一騎打ちとなった。政令指定市の堺市を残すのか、なくすのか――。自治体のあり方を問う異例の選挙戦は、維新を巡る与野党の微妙な距離感も映し出す。
トピックス「大阪都構想」「堺は一つ。堺はなくさない!」。午前9時半すぎ、堺市役所に近い選挙事務所前で竹山修身(おさみ)氏(63)が人さし指を突き上げた。
竹山氏は「都構想は政令指定市を廃止し、権限を大阪府に吸収させるもの」と批判。「市税1300億円のうち460億円が府に吸収される」と数字を挙げ、反都構想を鮮明にした。
堺市は2006年、都道府県並みの権限を持つ政令指定市に「昇格」したばかり。竹山氏は指定市ならではの充実した財源を活用してきたと強調する。
大阪府知事だった橋下徹氏の応援を受けて09年に初当選した竹山氏だが、翌10年に橋下氏が都構想を打ち出したことで、たもとを分かった。
その橋下氏が代表を務める維新は今回、前堺市議の西林克敏氏(43)を立てた。出発式で西林氏は「堺をつぶすなんて毛頭考えていない。ワン大阪で堺を元気にしたい」と訴え、都構想への理解を求めた。
大阪の司令塔を一つにまとめる都構想は橋下氏の悲願だ。堺市が不参加となれば、広域行政の一元化は不完全なものになる。橋下氏は「竹山市長は『堺がなくなる』と不安をあおるが、堺はなくなりません。役所の仕組みを変えるだけです」と強調。「オリンピックを呼べるような大阪を目指したい」と呼びかけた。
過熱する舌戦に、有権者からは「都構想ばかり話に出ているが、市民生活がどうなるのか気になる」(堺市東区の男性会社員36歳)と戸惑う声も聞かれた。
■政党支援 前回と類似
「国政にうつつを抜かして大風呂敷ばかりを広げる人に自治体の長を任せられるのか」
竹山氏の出発式では民主党の辻元清美衆院議員もマイクを握り、橋下氏批判を繰り広げた。会場には自民党の国会議員もずらりと並び、政党による後押しを印象づける。都構想に反対する共産党に加え社民党も独自に支援している。
ただ、民主党の幹部クラスが応援に入る予定はない。国政で日本維新の会との連携を視野に入れる自民党も党本部として積極的に関わらない方針。出発式であいさつした自民党の竹下亘組織運動本部長が「都構想」や「維新」に触れることはなかった。
一方、維新は所属国会議員に対し、「最低3回」の応援入りを義務づけている。橋下氏は堺市中心部での街頭演説で「僕らに反対する勢力は自民も民主も共産も手を組んでいる。自民、共産が組むことはどれだけおかしいことか」と強調した。自民、公明、民主、社民の各党が相乗りで支援した現職に対し、橋下氏が新顔を推す構図は4年前と同じ。圧勝した前回の再現をもくろむ。
両陣営から支援要請を受けた公明党は自主投票を決定。都構想には慎重だが、静観する姿勢だ。
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朝日新聞官邸クラブ