集団的自衛権の行使容認を目指す安倍晋三首相。有識者懇談会の議論を七カ月ぶりに再開させた。
懇談会は「公海での米艦艇の防護」「米国に向かう弾道ミサイルの迎撃」について、憲法解釈では禁止されているが、踏み切らなければ日米同盟は崩壊すると結論づけている。個別的自衛権で対処できる、ミサイル迎撃は技術的に無理などの指摘はどこ吹く風だ。
これらの議論は肝心なことを棚上げしている。日米安全保障条約の第五条は「日本の施政下にある領域のいずれか一方に対する武力攻撃への日米共同対処」を定めている。
集団的自衛権が行使できるとなれば、日本を守るだけでなく、米国も守れることになって条約を踏み越えるため、条約改定が必要となる。そして米国が第五条で日本防衛の義務を負う見返りとして、米国への基地提供義務を定めた第六条の見直しを主張しなければ、日本の負担が一方的に増すことになる。
「日米同盟の強化」を掲げる安倍首相としては、米軍基地の撤去を持ち出したくないのか、条約改定に踏み込もうとはしない。
日米で議論を進めているのは日本有事における日米の役割分担を定めた日米ガイドラインの改定だが、そもそもガイドラインは日米安保条約を前提にしている。日米関係の見直しを抜きに集団的自衛権の行使だけ認めようというのは筋が通らない。 (半田滋)
この記事を印刷する