特集ワイド:福島原発の汚染水問題 「7年後」までの解決、処方箋は 空冷、堀で包囲、地下ダム
毎日新聞 2013年09月24日 東京夕刊
一方、山側から流れてくる地下水の対策も重要だ。広さ約3・5平方キロメートルの敷地はほぼ台形で、地下には台形の斜辺に沿うように「地質の尾根」と呼ばれる部分がある。これは周辺の地質より硬く標高が高いため水を通しにくい。つまり地中の分水嶺(ぶんすいれい)のような役割を果たしているのだ。丸井グループ長は、この「地質の尾根」を利用する方法を提案する。台形の上辺の部分にあたる敷地境界に「地下ダム」を造り、敷地内に流れ込もうとする地下水を両側の「地質の尾根」の外側に導いて海に流すのだ=図。
「地下ダム」建設は困難に思えるが、敷地境界部では地下水を通す地層が地表付近に出ている部分があり、そこから薬液を入れるだけで地下水の速度を低下させるという。薬液といっても石灰を水に溶いたもので、土の中で固まり、透水性は現在の100分の1以下になる。
丸井グループ長によると、現在は敷地全体を通過する地下水量は1日約4000トンで処理すべき水の量はうち約700トンに達するが、「地下ダム」によって数トンに減らせる。「茨城県土浦市の人口は14万人ですが、1日の水道配水能力は約7万トン。4000トンという量がいかに膨大か。敷地全体を流れる地下水を減らすことは非常に重要なのです」(丸井グループ長)
ただ、こうした対策をとったとしても原発処理が「コントロール」し切れるかは不透明だ。
今中助教が警告する。「チェルノブイリでは事故後2年半の時点で原子炉内がどうなっているかテレビカメラで調べられたが、福島第1では溶けた燃料がどうなっているか把握できていない。一刻も早く原子炉内の燃料の状態を確認するとともに、汚染水貯蔵タンクに水量計やアラームを付け監視を強めるなど、やるべきことは多い」
希望的観測によらず、「最悪」を見据えて「コントロール」する指揮官こそが求められているのではないか。
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