社説:JR北海道 鉄道事業者の資格なし
毎日新聞 2013年09月25日 02時30分
JR北海道が、補修が必要なレール97カ所を放置していたことが発覚した。うち49カ所は乗客を乗せた客車が走行する本線だった。
乗客の命や安全を何と心得ているのか。特定の担当者や部署の怠慢に責任を押しつけるわけにはいかない。JR北海道の組織的な欠陥と見るべきだ。現状では公共交通を担う鉄道事業者としての資格に欠ける。そう指摘せざるを得ない。
発端は、19日に起きた貨物列車の脱線事故だった。レール幅の補修が放置されていたことを機に、レール異常の点検を20日から始めた。そして保線管理の責任者は21日に記者会見し、脱線現場を含め9カ所のレール補修の放置があったと公表した。ただし、いずれも通過列車の少ない駅構内の副本線だった。
その際、「本線は本社と保線現場でダブルチェックしている。新たな点検は必要ない」との見解を示したが、国土交通省の指示で緊急点検して今回の事態が判明した。
22日になって野島誠社長が会見し、「手が回らず補修を後回しにして失念したようだ」と放置の理由を語ったが、あいまいな説明に終始した。2日連続で釈明に追われた経緯も含め、組織としてあまりにお粗末だ。多くの乗客を日々乗せている責任感や真剣さも伝わってこない。体制の抜本的な改革と、安全意識の徹底が必要だ。
異なる目でチェックを繰り返すのが、安全を第一とする公共交通機関の鉄則だ。だが、本社と現場との連携が不十分で、鉄則が守られていなかった可能性が高い。また、補修の放置が特定の部署に集中しているとの指摘も出ている。
ならば、何がその原因なのか。マニュアルなどの不備で全社的な統一基準の下で管理がされていなかったのか。チームワークや意思の疎通を含めた組織の風通しに理由があるのか。徹底的な検証が求められる。
24日も根室線の普通列車で白煙騒ぎがあった。現在、国交省が特別保安監査に入っている。運輸安全委員会も貨物列車の脱線事故を調査中だ。国交省はこうした作業を通じてJR北海道に徹底的にメスを入れ、解体的な出直しを促すべきだ。
菅義偉官房長官は24日、「極めて悪質性がある。組織の体質的な問題だ」と述べた。JR会社法で国交相はJR北海道の事業認可権を持ち、社長人事は閣議了解事項になっている。政府も、国交省を通じ安全の徹底に目を光らせるべきだ。
安全の根幹に関わる今回のケースはJR各社にとってもイメージダウンだ。既にJR東日本が技術支援をしているが、グループとして安全を支える方策を検討したらどうか。