「「慰安婦の真実」国民運動」が「河野談話」撤廃を求める−2
まず第1点として、この「「慰安婦の真実」国民運動」(以下「国民運動」と略)のアピール全文の問題点としてあげられるのは、責任転換である。
アピール文では、慰安婦をめぐる現在の日本の状況を「四面楚歌」と述べており、そのような状況に陥った原因を「河野談話」にあるとしている。しかし実際には、「四面楚歌」になるような状況にしていったのは、慰安婦問題の解決を行わない日本政府の態度であったり、慰安婦を「単なる売春婦」などとしてセカンドレイプし続ける否定派たちの言動に原因があるのである。
このような自称「愛国者」を名乗る否定派たちが騒げば騒ぐほど、日本は慰安婦問題で国際的に孤立していくのである。つまり、今後「国民運動」が活動を行えば行うほど、更に状況は悪化していくのである。
「四面楚歌」の状況に陥っている原因は、否定派たちの言動にあるにもかかわらず、それを「河野談話」に求めている点は、明らかに責任転換と言わざるを得ない。
第2点目に問題点としてあげられるのが、出典の不明である。
アピール文には「あるアメリカの有識者は」として、「古今東西、軍隊と売春婦はつきものであり、それについて謝罪したのは有史以来日本政府だけである」、「そのような当たり前の事に謝罪したのは、本当はもっと悪いことをしていて、それを隠すためではないかとさえ勘ぐられている」と述べている点である。
ここでいう「あるアメリカの有識者は」とは誰のことなのか。その事には全く触れていない。そのような重要な点を曖昧にした情報は信憑性が薄い。
このような文章であれば、極端な話何でも正当化できるのである。「あるアメリカの有識者は、日本国内で慰安婦問題を否定するような活動を行っている人たちがいるために、日本は国際的に孤立しているのである。」とか、「あるアメリカの有識者は、日本政府が元慰安婦全員に賠償すべきであると語った。」など、どのような文章でも書けてしまう。
なぜ、この「あるアメリカの有識者」の名を伏せなければならないのか、本当はそんな人物などいないのではないかと「勘ぐ」ってしまう。
第3点目に、「河野談話」の作成について、「慰安婦の強制連行さえ認めれば事は収まるという韓国側の誘いに乗って、事実を曲げて政治的妥協をはかって作成された文書です。」としていることである。
これについては、河野洋平官房長官(当時)と金泳三大統領(当時)との間で密約があり、金銭的補償の放棄と引き換えに強制連行を認めた、というものである。しかし、現在そのような「密約」を示すものは見つかってはいない。河野洋平自身もこの事は明白に否定している(『朝日新聞』 1997年3月31日)。
このように、「政治的妥協をはかって作成された文書」としての明確な根拠がないにもかかわらず、「国民運動」アピール文では、「河野談話」によって「韓国人の妄言に見せかけの信憑性を与えること」となったとしている。
つまり、「国民運動」アピール文を貫いているものは、責任転換と曖昧な根拠であり、文章としての説得力には全く欠けるものであると言わざるを得ない。 |
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