1 福井県内における山岳遭難発生状況
 平成24年中の県内における山岳遭難事故は、『発生11件(遭難者15人)』と前年と比べ増加しました。
 事故内容について分析しますと、目的別では、「登山」7件、「山菜採り」3件、「その他」1件で、態様別では、「滑落・転倒・道迷い」9件、「疲労」2件で、年齢別では、遭難者全員が「40歳以上」という状況で、11件中9件が単独登山による事故でした。登山届の提出状況を見ますと、遭難者した15人中提出した方はいませんでした。


福井県内における過去の山岳遭難発生状況(平成20年〜平成24年)
発生件数 遭難者数 遭難者内訳
死亡 行方不明 負傷 無事救助等
平成20年    3   1   0   0  2
平成21年 12 17   2   0   4 11
平成22年 13 13   5   0   3  5
平成23年  7 12   0   0   3  9
平成24年 11 15   1   0   6  8

                                  * 上記結果については、警察に救助要請された事故発生件数です。

 ○ 過去5年間(平成20年〜平成24年)の季節、目的、態様、年齢別の状況
季節別 目的別
態様別 年齢別
 2 県内の山を登る時の注意事項
(1) 登山計画書の作成
 〜 登山の計画は、経験豊富なリーダーや仲間と一緒に登りましょう。 〜

   
安全な登山と万一遭難した場合の早期救助のため、しっかりとした登山計画書を
  パーティー全員で検討して作成してください。
  登山計画書の提出方法については、「8 登山計画書の提出方法」を参考に、警
  察本部又は地元の警察署に提出しましょう。
(2) 気象情報の事前把握と気象の変化に注意
   山へ行く数日前から天気図に目をとおし、山の天候を確認し、山に出かけてから
  も常に新しい気象状況(ラジオなどから入手)に細心の注意を払いましょう。

  また、悪天候が予想されたら撤退する勇気も必要です。
(3) 無積雪期における注意事項

 @ 熊対策
      福井県内の山間地は、自然環境が豊かで、ツキノワグマも600頭程度生息
   していると考えられます。クマは国内の数少ない森林性大型哺乳類であり、私
   たちの住む自然界を構成する大切な一員です。
    ツキノワグマは、本来大変臆病で温厚な動物です。昨年各地で人を襲ったの
   は、山に木の実などの餌がなかったためであり、餌が豊富であれば人を襲うこ
   とは珍しいのです。

    イ 身を守る基本事項
     クマに自分の存在を知らせてください。ラジオ、笛、鈴などで音を出して行
   動してください。
     子グマに出会った場合はそっと立ち去ってください。親グマが近くにいます。
     急に大声を出さないで、クマまでの距離があるようなら、そっと立ち去って
   ください。距離が近い場合は、クマから目を離さないようにして、できるだけ
   ゆっくり後退してください。
     攻撃が避けられないときは、頭や首などの急所を守ってください。うつ伏せ
   になると、背中のザックで背中は守られます。その際、両手で首の後ろをガー
   ドしてください。死んだふりをするよりは、積極的に自分の体を守ってくださ
   い。
  ウ その他
     ゴミは必ず持ち帰ってください。生ゴミなどを無造作に捨てたり、置いたり
   するとクマを引き寄せることになります。
  A 毒蛇対策
    県内はマムシなどの毒蛇がいます。奥越地方の荒島岳、経ヶ岳、加越国境(取
  立山、赤兔山、大長山など)の山々は特に多いと言われています。
      万が一、マムシに噛まれたら、毒を吸い出して、仲間がいれば背負ってもらう
  等して下山してください。
   8時間位の間に解毒の血清を注射しないと、死にいたることもあると言われて
  います。

(4) 積雪期における注意事項

 @ 積雪について
      福井県の奥越地方は、日本でも有数の豪雪地帯であり、日本海から近く、通称
  ドカ雪と呼ばれる湿った重い雪が大量に降る地域です。
 A 雪崩について
    ア 雪崩の原因
        昔は雪崩について、自然発生するという考え方でしたが、最近の研究結果に
   より実際に雪崩を引き起こしているのは、その80〜90%までが人為的な原
   因であることが判ってきています。
雪質調査の様子
    イ 雪崩から身を守るために
     狭い範囲に、何人も入らないように
   してください。一人ひとり、一定の間
   隔を空けて歩き、同じ場所に何人も入
   らないようにしてください。
     開けた斜面よりも、樹林帯の中を通
   ることの方が安全ですが、樹林帯の上
   方が
急斜面になっていると、樹林帯の
   中を雪
崩が走ることもあります。
   雪庇を踏み抜かないでください。踏
   み抜いて落下すると、自分自身が雪崩
   を引
き起こしそのまま埋没してしまう
   こと
があります。
                          
雪質を調査する警察官

 B その他
    ア 雪崩ビーコン
        駐車場に着いたら、雪崩ビーコンのスイッチを入れて入山してください。雪崩
   ビーコンを全員が着装してないと、もし、雪崩に埋没しても探すことができませ
   ん。
埋没してから15分間に掘り出せるかどうかが一つの目安です。
    イ ゾンデ棒・スコップ
       ゾンデ棒は埋没した者を特定して掘り出す時に絶対必要です。雪崩が発生する
   とまたたく間に雪は固くなり、手では掘ることができず、スコップが必要です。

 
  

 登山技術というと、特別なテクニックを必要とすると思われますが、積雪期の登山や、特殊な
岩登りなど専門的なものを除けば、特別な技術は必要としません。
  まず体力をつけ、歩くことがその基礎となり、一歩ずつ確実にその内容を高め、進歩させてゆ
けば良いのです。
ホイスト救助訓練の様子
新型機「くずりゅう」によるホイスト救助訓練の状況
ホイスト救助訓練の様子