大戸川(上)からの水でつぶれたビニールハウス=大津市で、本社ヘリ「あさづる」から
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台風18号の豪雨で堤防が決壊するなどして深刻な水害を引き起こした大津市の大戸川と高島市の鴨川。地元では以前から不安を抱え県などに対策を求めていたが、遅々として進まなかった。「数十年に一度の大雨」で市民の生活は大きな打撃を受ける形となり、両市の職員らは「(県などが)もっと早く動いてくれていれば被害は起きなかった」と悔しがる。
「災害が起こる前に河川整備を進めることを明確にしてほしい」。八月の定例会見で大津市の越直美市長は強い口調で県に決断を迫った。一九七八年に国が大戸川ダムの計画調査を始めてから、市は国や県に一貫してダムの整備やそれに伴う大戸川の堤防整備、河川拡幅などを求め続けていた。
同ダムの建設が事実上止まってからも毎年、県に河川整備の要望書を提出。地元住民の意見を取りまとめ、今年三月に県に河川整備計画を策定させるまでにこぎ着けた。
今回の水害は工事が本格的に始まる矢先のこと。被害が大きかった同市石居の石居橋の百メートルほど上流では、左岸の堤防がえぐられた。流量を確保しなければ危険だとして、川幅の二十メートル拡幅が決まったばかりの場所。地元からは「ダムが無理なら早急な河川整備を」という声も出ていた。
一方、深刻な浸水被害を受けた高島市鴨。床上浸水となり、泥だらけになった住宅の後片付けに追われている住民は「これまでも大雨で危険な状況になったことがあった。行政は何もしていない」と怒る。
鴨川沿岸では七五年の台風で百一戸が浸水。九九年にも二十戸が水に漬かっている。住民の要望を受けた高島市は「鴨川は典型的な天井川。土砂の流出も見られて危険」と判断。河川の整備を求める要望書を毎年、県に提出していた。今回決壊した地点も重点整備区間になっていた。
県流域治水政策室の担当者はダム整備を早急に国に求めたり河川整備計画を大幅に変更することはないとするものの「できる限り早く河川整備や整備計画策定を進めたい」とした。
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