被災者支援法:自治体の批判意見 「切り捨て」住民切実
毎日新聞 2013年09月24日 02時30分(最終更新 09月24日 02時38分)
復興庁が実施した「子ども・被災者生活支援法」の基本方針案を巡るパブリックコメント(意見公募手続き)には、当初の期限だった13日までだけでも千数百件の意見が集まり、その後も増え続けた。自治体にも多数の住民の声が寄せられ「支援法の対象に、という要望が特に強かった」(千葉県野田市)という。自治体による異例の意見応募の背景には「支援法から切り捨てられる」という対象外の住民の切実な焦りがある。【日野行介、袴田貴行】
千葉県鎌ケ谷市の主婦(40)は23日、線量が年間1ミリシーベルトを上回る地域を支援法の対象に含めてほしいとの意見をメールで復興庁に出した。5年前に念願のマイホームを購入。市内の線量は年間1ミリシーベルトを上回り、国から「汚染状況重点調査地域」に指定されている。
5歳の長女の健康に不安を抱き、支援法の対象になれば被ばくに対応した健康診断を受けられると期待した。市民集会などで同庁担当者に意見を伝えたが、先月30日に公表された案を見て「全く反映されていない」と肩を落とした。「なぜ支援対象に入らないのか疑問です」
同庁が今月13日、急きょ東京都内で開いた基本方針案の説明会。千葉県松戸市の女性は「市は政府も認めたホットスポットだ。除染した地域が支援対象から外れる整合性を説明してほしい」と迫った。地方議員らが19日に都内で開いた同庁との交渉でも同様の声が相次いだ。
こうした批判や疑問に、復興庁は「自主避難者の数や避難指示区域への近さなどさまざまな事情を総合的に判断した」と繰り返し、平行線をたどった。
パブリックコメントで、自治体から異例の突き上げを受ける事態となった復興庁。批判の矛先は案の中身だけでなく、元幹部のツイッターによる暴言問題を機に浮かんだ秘密体質にまで及んでいる。
復興庁は子ども・被災者生活支援法の基本方針案を検討するため、内閣府原子力被災者生活支援チームや環境省などと協議してきた。この関係省庁会議では議事録が作られていないことが判明。同庁は会議の存在すらこれまで明らかにせず、方針案がまとまった過程は今も闇の中にある。千葉県柏市などは「検討経過を明確にせよ」との意見を出した。