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【コラム】

中日春秋

 七年前に亡くなった茨木(いばらぎ)のり子さんに「聴く力」という詩がある。<ひとのこころの湖水/その深浅(しんせん)に/立ちどまり耳澄ます/ということがない/風の音に驚いたり/鳥の声に惚(ほう)けたり/ひとり耳そばだてる/そんなしぐさからも遠ざかるばかり>

▼わが父祖たちは鳥の言葉が分かる頭巾をかぶり、樹木や子どもの病気を治した「聴耳(ききみみ)頭巾」の民話を持つ。<その末裔(すえ)は我がことのみに無我夢中/舌ばかりほの赤くくるくると空転し/どう言いくるめようか/どう圧倒してやろうか>

▼自分にしか関心がなく、他人を言い負かすことに懸命な輩(やから)ばかりだ。<だが/どうして言葉たり得よう/他のものを じっと/受けとめる力がなければ>

▼インターネットの普及で、言論空間は攻撃的で言いっ放しの傾向が強まり、対話が成立しないことも多くなっている。その象徴が街の中で民族差別をがなり立てるヘイトスピーチだ

▼「韓国人を殺せ」などと連呼する恥ずべきヘイトスピーチに反対する大行進が一昨日、東京・新大久保などであり、約二千人が参加した。「差別はやめよう。一緒に生きよう」と人種・民族の違いや社会的弱者に向けられるすべての差別に反対の声を上げた

▼ハングルの美しさや奥深さにひかれた茨木さんは五十歳で学び始め、韓国の現代詩を翻訳した。ご健在だったら、どんな言葉を紡いでいただろう。

 

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