手記:福知山花火大会事故 「背中に火 地獄だった」
毎日新聞 2013年09月24日 08時13分(最終更新 09月24日 10時47分)
京都府福知山市の花火大会での爆発事故で、小学6年の長男(11)と同1年の次男(6)や親族ら計5人で見物中に火傷を負った女性(41)=名古屋市=が23日、毎日新聞に手記を寄せた。女性と子供2人は9月1日に退院、子供は既に通学しているという。手記は以下の通り(抜粋)。
「もう少しで花火が上がるで」。私が(子供に)答えた時、赤いTシャツを着た露店の男性が前を斜めに横切り、(階段の状の観覧席)四段目辺りまでかけ上がった。男性の方を見ると「カンカン、カンカン……」。何かやっている音がした。すると、「シュー!」と音がし、男性が赤い缶を持ち上げ、私達の方へ向けた。霧状の液体が髪にかかった。ガソリン臭がした。「キャアーッ」と叫び、咄嗟(とっさ)に前の屋台の方へ逃げた。後ろで爆発音。同時に熱風が襲いかかった。背中に火がついたような気がした。素手で消したが上の服は燃えてちりぢり。「熱いっ。痛い」。手の皮がめくれていた。髪も縮れて燃えた感触。顔もピリピリ痛かった。
我が子とはぐれたことに気づいた。頭の中が真っ白。泣きながら爆発音が聞こえる中、屋台の方へ戻った。そこは人が立ち入れる様相ではなかった。何度も子供の名を叫んだ。
茫然(ぼうぜん)と立ち尽くす我が子を見つけた。「痛いよー」と泣いていた。5人で川へ飛び込んだ。地獄だった。限界を超える痛みだった。
(入院先に)花火大会実行委員会の2人が面会に来た。「誠心誠意させてもらいます」との言葉とは裏腹に誠意は伝わらなかった。
今も長男は突然泣き出し、私も友人や知人に会う気になれない。毎晩、風呂場で傷跡を見るたび、暗い気持ちにさせられる。私たちは今も痛みで苦しんでいるのに、風化されてしまうことが怖い。