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番外編 多数視点
番外編 とある夜の出来事
「もうこんな時間か……」
 携帯電話をスーツの胸ポケットに仕舞う。
 本来なら今頃は、肴とビールを片手にテレビを観ながら一日の疲れを解消しているはずだった。帰っても出来ることだが、明日も朝が早いため短い間しか自由時間が取れない。寝なければいい、そう思うのだが――今の俺では自殺行為に等しい。体がついていかない。もう立派なおっさんだ。頭だって薄くなってきたし。でもまだ薄いだけだよ。会社の後輩の目線が絶対一回は頭頂部分を一瞥するけどさ、けして禿じゃない。大事なことだからもう一度言うけど、禿じゃないからね? 
「親父もこんな気持ちだったのか?」
 謝りたい。大人になったから理解できる、この辛さ。子供の頃の俺は、クソガキだ。俺の息子もいつか俺に言うのだろうか。今から心配すつことじゃないな。まだ思春期じゃないから当分先のことだ。
 鍵をさして玄関を開けた。
 暗い。
「ただいまー」
 妻は起きてくれているかな? まぁ、流石に寝てるか。
 やっと家に帰った。
「疲れたー」
 脱いだスーツを椅子に掛けて、冷蔵庫の前へ歩む。お目当ての缶ビールを手にとる。まずは一缶飲み干す。
「くうぅー! さいこっー!」
 喉に流れ落ちるときの快感で仕事の疲れが和らぐ。だが。
 まだ、だ。まだ疲れが無くなるには足りない。一缶だけ手にとる。本当はもう一缶欲しい処だがこれ以上は明日に響くので我慢する。一週間に飲める本数が決まっているっていうのは辛いものだ。かと言って、好きなだけ飲んでもいいとなると俺はもっと頑張らなければならなくなる。それはとても大変なことだ。精神的にも、肉体的にも。
 台所の下に仕舞われている宝箱を出して、中にあったさきいかを選ぶ。二つのアイテムを抱えて定位置に座る。テーブルに置き、ソファーに凭れてテレビを点ける。缶を開けて、口に運ぶ。爽快さが喉を駆け抜ける。ああ、最高。この時間が二番目に幸せ。
 心地よく酔いが回ってきた処で妻の手料理を食べることにした。ビールで多少腹は満たされたけれどまだまだ胃は求めている。節約するために昼ご飯を我慢してあまり食べなかったせいか、食欲旺盛になった。
「その前に、トイレトイレっと」
 この歳になって漏らすのは恥ずかしいから早めにトイレへ。
「ん?」
 帰った時には気づかなかった……いや、違うな。帰って来たときに音はなかった。
 でも今は聞こえる。
「これは……」
 音がする二階へと階段を上った。近づくにつれて確信していく。
「まったく……あいつ……。声が大きい」
 息子が寝ている時間だからと言っても、これじゃあ起きてしまうだろう。
 妻の声で俺の股間が膨らんでしまった。
 そういえば、してなかったな。欲求不満になってるのか。今日は気分が良いし久々に遣るか。でもその前に注意しなければ。
 階段を上がった手前の扉を開けた。
「――ったくな!」
 目に飛び込んできた光景は想像と違った。
「……え?」
 こんなこと想像もしていなかった。
「なにを、やってる? 何をやってるんだ! お前ら!」
 息子と妻が裸で絡み合っていた。



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