「現実の壁」認めた朴槿恵政権の福祉政策

 韓国政府は26日に発表する来年度予算案で、基礎年金など朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の重要公約の一部を縮小する方針を固めたもようだ。朴大統領はこれまで「公約は必ず実行する」と述べてきたが、任期1年目から不況と税収不足という現実の壁に直面し、次善の策を講じざるを得なくなった。

 保健福祉部(省に相当)の陳永(チン・ヨン)長官による辞意表明検討は、そうした状況を象徴的に示しており、今後の朴大統領の財政・福祉政策の転換点となる見通しだ。

 大統領府(青瓦台)と政府高官は22日「来年度予算案の準備過程で、基礎年金以外にも、大統領選の公約の一部が随分修正された」と述べた。与党幹部は「どうにかして公約を守りたいというのが大統領の考えだったが、(避けたくても避けられない)現実の瞬間が訪れざるを得ない。基礎年金を含め、四大重症疾患の治療費全額国家負担など、福祉公約の一部と各地のインフラ関連公約は、財政状況からみてそのまま実行するのは困難だ」と述べた。

 これに関連し、与党セヌリ党のユン・サンヒョン首席院内代表は「基礎年金は与党の内部検討でも、原案通りで行くのは難しいとの声が優勢だった。公約の後退だと非難する方もいるが、財政上困難なことを無条件で公約通りに推進するのも責任ある態度とはいえない」と指摘した。

 現状を踏まえ、朴大統領は16日に与野党の代表と行った三者会談で「歳出の見直しと非課税措置の縮小で福祉財源を確保し、それでも不足する場合には、国民の同意を得た上で増税を行う可能性もある」と述べた。

 大統領府幹部は「朴大統領の任期中に福祉公約だけで135兆ウォン(約12兆5000億円)が必要になるが、景気回復の遅れで、今年上半期に10兆ウォンの税収不足が生じるなど、財源は不足している」と説明した。その上で「来年度予算案では大統領の重点国政課題であっても優先順位や重要度を判断し、細かく見直せるものは見直す。一部は大幅な見直しもあり得る」と指摘した。

 その一方で、同幹部は「任期1年目でもあり、今回は公約放棄ではなく、時期を見直すなどの方法で、実行の余地を残す部分が多い」とも述べた。しかし、当初から大統領選での福祉公約を全て守るのは無理だとの指摘があった。基礎年金だけでも公約を守るためには、4年間で60兆ウォン(約5兆5300億円)掛かるため、専門家は公約を守るのは困難だとみている。

 同時に大統領府の別の関係者は「地方のインフラ関連の公約では、既に実行中の事業でも日程を先送りするものが出てくる。大統領が新たに公約した事業でも延期されるものがある」と述べた。朴大統領は今後、国会での施政方針演説などで、国民に直接理解を求めていくことになりそうだ。

権大烈(クォン・デヨル)記者
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