福岡市動物園の豆汽車、来春引退 1200万人乗車、存続求める声も
福岡市動物園(中央区)で60年にわたって子どもたちに親しまれてきた「豆汽車」が園の大規模改修工事に伴い、来春限りで姿を消す。開園当時から残る園内唯一の遊具で、これまで延べ約1200万人が乗車した。低料金で楽しめる「隠れた人気スポット」(園担当者)だけに、利用者からは存続を求める声も出始めている。
豆汽車は1953年8月22日の開園日に、現在と同じ正門近くの広場で運行を始めた。74年までは初代の「ぞうさん列車」、75~92年は2代目の「新幹線ひかり」が登場。93年からSL形の「ポッポ号」が子どもたちを楽しませている。
市は2006年に園の再生基本計画を策定。25年度までに、動物本来の動きを見せる「行動展示」に向けた新施設の建設を進めている。動物の観察を主体にする基本計画に沿って獣舎を拡張。敷地が手狭になることなどから、豆汽車は廃止が決定した。広場はレストランになる予定だ。
豆汽車は、春の行楽シーズンには1日約2千人が乗る。人気の理由は料金の安さだ。開園時は大人、子どもともに1回10円。2度、値上げした今でも大人100円、子ども20円で1周約90メートルのレールを2周する。そんな低価格でも、人件費などの経費を補うだけの料金収入を上げてきた。園関係者は「安さもあって来園のたびに10回乗る子どももいる」と話す。
今年4月に修理のため運行を一時停止した際には市民から「また乗りたい。いつ再開するのか」と電話があった。今回、廃止を知った来園者からは「存続してほしい」との意見が既に数件寄せられている。
市は「60年変わらず子どもたちに愛されている遊具とは認識している。ただ、仮に移転して存続させる場合も、新たな財政負担や土地の確保など課題が多い」としている。
=2013/09/18付 西日本新聞夕刊=